
「外部のコンサルタントに頼りきりで、社内にノウハウが全く残らない」「毎月のレポート内容は理解できるけど、そこから自分たちで次のアクションを決められない」。そんなもどかしい思いを抱えていませんか?正直に言うと、これは私自身がコンサルタントとして多くの企業様と関わる中で、最も胸が痛む光景の一つです。
優秀なコンサルタントは、短期的な成果を出すための強力なパートナーです。しかし、本当の意味での成功とは、いつかそのコンサルタントが不要になるくらい、自社が成長することに他なりません。
WEBコンサルティングの内製化は、単なるコスト削減の手段ではないのです。それは、変化の激しいデジタル市場で生き残るための「知の資産」を社内に築き、自社の足で走り続けるための、最も重要な経営戦略と言えるでしょう。
ここでは、私がクライアントと共に泥臭く歩んできた経験に基づき、コンサルタントの力を最大限に活用しながら、最終的に「自走できる組織」へと変貌を遂げるための、具体的なロードマップを余すところなく解説していきます。
目次
WEBコンサルティングの内製化を目指す旅は、まず「受け身の姿勢」を完全に捨てることから始まります。コンサルタントとの定例ミーティングを、ただ報告を聞くだけのありがたいお説教の時間にしていては、ノウハウは右から左へ受け流されていくだけ。彼らが語る言葉のすべてを「自社の血肉」に変えるという、貪欲なまでの姿勢が不可欠です。
私がクライアントに必ず最初にお願いするのは、「秘伝のタレを継ぎ足していく『壺』を用意してください」ということです。これは、社内Wikiやクラウド上の共有ドキュメントで構いません。重要なのは、ミーティングでの発言やレポートの考察、メールでのアドバイスといった断片的な情報を、一元的に集約する場所を最初に決めることです。
情報を整理する際は、以下の3つのポイントを意識してみてください。
このプロセスは、一流のシェフから秘伝のレシピを学ぶのに似ています。完成した料理を味わうだけでなく、なぜその食材を選んだのか、なぜその火加減なのか、その一つひとつの理由を理解し、自分のレシピブックに記録していく。この地道な作業こそが、コンサルタントの頭の中を自社に移植するための、最も確実な第一歩なのです。
※関連記事:WEBコンサルティングと他サービスとの違い
ノウハウの整理と並行して進めるべき最重要課題が、内製化の核となる「社内担当者」の育成です。いきなり「来月から君が担当だ」と無茶振りしても、うまくいくはずがありません。コンサルタントと伴走しながら、段階的にスキルと権限を移譲していく計画的なアプローチが求められます。
私は、担当者の育成をRPGのレベルアップになぞらえて、以下の4つのステップで進めることを推奨しています。
【フェーズ1】シャドーイング期(見習い):
この段階では、担当者はコンサルタントの「影」に徹します。全てのミーティングに同席し、レポートを読み込み、コンサルタントが何を見て、どう考え、何を提案しているのかを徹底的に観察します。ここでのミッションは、前述のナレッジベースを誰よりも詳しく、正確に記録できるようになることです。
【フェーズ2】アシスタント期(パーティメンバー):
次に、コンサルタントの指示のもと、具体的なタスクの一部を担当し始めます。例えば、「このキーワードリストを基に、ブログ記事の構成案を作成してください」「来週の広告レポートの数値をまとめておいてください」といった作業です。ここでは、指示されたことを正確にこなす実行力が問われます。
【フェーズ3】実践期(リーダー):
このフェーズから、担当者は小さな領域の「主役」となります。「特定の製品カテゴリーのSEO対策」「Facebook広告の運用」など、限定された範囲の運用を任せ、PDCAサイクルを回す経験を積みます。コンサルタントは、実行者ではなくアドバイザーとして、その活動を見守り、壁にぶつかった時に助言を与える役割に変わります。
【フェーズ4】自走期(勇者):
最終段階では、担当者が自ら課題を発見し、戦略を立案し、チームを動かせるようになることを目指します。コンサルタントが作成していた月次の戦略レポートを、今度は担当者が作成し、経営層にプレゼンテーションする。ここまで到達すれば、内製化はほぼ完了したと言えるでしょう。
このステップアップには、最低でも半年から1年はかかります。経営層の焦る気持ちは痛いほど分かります。しかし、ここでグッとこらえ、担当者の小さな成功体験を積み重ねていくことを見守る姿勢が、育成の成否を分ける最大の鍵なのです。

担当者が育ち、ノウハウが蓄積されてきても、その知識が個人の頭の中に留まっているだけでは、組織の力にはなりません。その担当者が異動や退職をした瞬間に、すべてがゼロに戻ってしまうからです。この「属人化」という時限爆弾のリスクを回避し、誰でも一定レベルの運用ができる状態を目指すために不可欠なのが、「運用マニュアル」の整備です。
しかし、多くの企業で作成されるマニュアルは、分厚いだけで誰にも読まれない「本棚の肥やし」になりがちです。本当に「使える」マニュアルを作成するには、いくつかのコツがあります。
そして、作成したマニュアルは、いつでも誰でもアクセスできる共有フォルダなどに保管し、その存在を社内に周知徹底します。盤石なマニュアル体制こそが、安定した内製化組織の土台を築くのです。
コンサルタントに依存している組織の多くは、改善のサイクル、いわゆるPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルをコンサルタントに回してもらっている状態です。月次のレポートで「Check」の結果を聞き、「Action」として次の施策を提案してもらう。これを自社で回せるようになることが、内製化の核心と言っても過言ではありません。
改善サイクルを組織の「呼吸」のように自然なものにするために、私が推奨しているのが「2種類の定例ミーティング」を社内で開催することです。
◆週次タクティカルミーティング(戦術会議)
【目的】 短期的な施策の進捗確認と、現場レベルでの軌道修正。スポーツで言えば、試合中のハーフタイムミーティングです。
【参加者】 WEB担当チームの現場メンバー
【アジェンダ】
【ポイント】1時間以内で、スピーディーに行う。ここでは、コンサルタントは基本的にオブザーバーとして参加し、現場の議論が停滞した時だけ助言します。
◆月次ストラテジーミーティング(戦略会議)
【目的】中長期的な戦略の評価と、次の大きな一手に関する意思決定。シーズンオフに行う、来季の構想会議のようなものです。
【参加者】 WEB担当チーム、上長、関連部署のキーパーソン
【アジェンダ】
【ポイント】 最初はコンサルタントが進行役を務めますが、徐々に社内担当者にその役割を移譲していきます。最終的には、担当者が自らデータに基づいて戦略を語り、上長を説得できる場を目指します。
これらの会議体を愚直に運営し続けることで、「データを見て、振り返り、次を決める」というリズムが組織に生まれます。最初はぎこちなくても、半年も続ければ、それはやがて当たり前の「文化」として根付いていくはずです。
※関連記事:売上につながるインスタ内製化の実践ノウハウ
コンサルタントが作成するレポートは、数値やグラフが並んだ、一見すると難解な文書に見えるかもしれません。しかし、内製化を目指す上で、このレポートを「ただ眺める」から「能動的に読み解く」へとステップアップする必要があります。
レポートを読み解くとは、単に「コンバージョン率が先月より上がった/下がった」という事実を確認することではありません。その数字の裏側にある「なぜ?」を考え、次のアクションに繋がる「仮説」を導き出す、いわば探偵ごっこのような作業です。
例えば、レポートに「ウェブサイトからの問い合わせ件数が前月比で20%減少した」と書かれていたとします。ここで思考停止してはいけません。
深掘りの質問①: どのページの数字が悪化したのか?
深掘りの質問②: そのページへのアクセス数自体は変わったか?
深掘りの質問③: そのページで、先月何か変更点はあったか?
導き出される仮説と改善策:
このように、一つの数字から出発し、「なぜ?」を繰り返して原因の仮説を立て、具体的な改善アクションに落とし込む。この思考プロセスこそが、データドリブンな改善の基本です。最初はコンサルタントに「この数字が下がった背景には、どんな可能性が考えられますか?」と質問することから始めましょう。その問いを繰り返すうちに、あなた自身の中に分析の「引き出し」が増えていくはずです。

戦略を立て、改善策を立案しても、それを実行する力がなければ絵に描いた餅です。内製化の後半フェーズでは、社内チームの「実行力」をいかに高めるかが重要なテーマとなります。コンサルタントが担っていたプロジェクトマネジメントの役割を、徐々に社内チームに移管していく必要があります。
実行力を強化するためのポイントは3つです。
1.タスク管理の徹底:
誰が、何を、いつまでに行うのか。全てのタスクを可視化し、共有することが基本です。スプレッドシートでも構いませんし、TrelloやAsanaのようなプロジェクト管理ツールを導入するのも非常に有効です。これにより、「言った言わない」「あの件どうなった?」といった無駄なコミュニケーションがなくなり、チームは実行に集中できます。
2.役割分担の明確化:
分析担当、コンテンツ作成担当、広告運用担当など、チーム内での大まかな役割を決めましょう。もちろん、厳密に分ける必要はありませんが、「この件で困ったら、まずは〇〇さんに相談する」という共通認識があるだけで、チームの動きは格段にスムーズになります。
3.「まずやってみる」文化の醸成:
内製化の大きなメリットは、意思決定から実行までのスピードです。私も若い頃は完璧な計画にこだわりすぎて、いくつものチャンスを逃した苦い経験があります。完璧な計画を練ることに時間をかけすぎるよりも、「まずは小さく試してみて、その結果を見て改善する」というアジャイルな考え方が重要です。上長は、チームの小さな失敗を許容し、挑戦を奨励する文化を育むことが求められます。
コンサルタントは、この実行フェーズにおいても、良き伴走者となります。チームのタスク管理がうまく機能しているか、役割分担に無理はないか、といった組織運営の側面からもアドバイスをもらい、実行力のある筋肉質なチームを作り上げていきましょう。
※関連記事:中小企業に適したインスタ内製化の進め方
ここで、私が過去に支援したクライアントの具体的な事例を一つご紹介します。その企業では、当初、新しいブログ記事の公開や既存ページの文言修正といったCMS(コンテンツ管理システム)の更新作業を、すべて我々コンサルタントが代行していました。担当者のAさんは、CMSを触ることに少し恐怖心すら抱いているようでした。
内製化への第一歩として、まず私たちは「CMS更新マニュアル」を、これ以上ないほど丁寧に作成しました(これは第3章の内容です)。ログイン方法から始まり、記事の入稿手順、画像の最適化方法まで、すべての操作をスクリーンショット付きで解説しました。
次に、Aさんには、まず「ブログ記事の誤字脱字を修正する」という非常に簡単なタスクから始めてもらいました(第2章のアシスタント期)。それに慣れたら、次は我々が用意した原稿をCMSに入稿する作業、そして最終的には、ご自身で簡単な告知記事を作成・公開するところまで、段階的にスキルアップしていただきました。
分析に関しても同様です。最初は我々が作成した月次レポートを解説するだけでしたが、次に「Googleアナリティクスのカスタムレポート」という、見るべき指標だけを抜き出した簡易的なレポート画面を用意しました。「まずは毎週月曜の朝に、この画面の数字をスプレッドシートに記録するだけで大丈夫です」と伝え、データに触れる習慣をつけてもらったのです。
やがてAさんは、自らCMSを更新し、その記事のPV数がどうだったかをカスタムレポートで確認するという、小さなPDCAサイクルを一人で回せるようになりました。時間はかかりましたが、この「手離れ」のプロセスこそ、コンサルタントが提供すべき本当の価値だと私は信じています。
※関連記事:インスタ運用を外注から内製化に切り替える手順
WEBマーケティングは、決して担当部署だけで完結するものではありません。むしろ、その成果を最大化するためには、営業、商品開発、カスタマーサポートといった他部門との連携が不可欠です。多くの企業が陥る「サイロ化(部門間の断絶)」の壁を取り払う仕掛けを作ることが、組織全体のWEBリテラシーを向上させ、協力体制を築く上で非常に効果的です。
そのための最も有効な手段が「社内勉強会」の開催です。
WEB担当チームが主催者となり、月に一度、ランチタイムなどを利用して30分程度の気軽な「社内ラジオ番組」のような勉強会を開くのです。テーマは例えば、以下のようなものが考えられます。
勉強会の目的は、WEBチームの活動を社内にアピールするだけではありません。むしろ、他部門から貴重なフィードバックを得ることに本当の価値があります。営業担当者から「お客様は最近、〇〇という点で悩んでいることが多いですよ」という現場の声が聞ければ、それは次のコンテンツ企画の最高のヒントになります。
最初は数人しか集まらないかもしれません。しかし、これを継続することで、WEBマーケティングが全社的な取り組みであるという文化が醸成され、部門を越えた協力者が現れ始めます。コンサルタントに外部講師として登壇してもらうのも、良いスタートの切り方でしょう。

内製化への取り組みを、単なる担当部署の「頑張り」で終わらせず、会社全体の正式な活動として位置づけるために、人事評価などの「目標管理制度(MBOやOKRなど)」と連携させることを強くお勧めします。
会社の公式な制度に組み込むことで、内製化は担当者個人のタスクから、組織として達成すべき「ミッション」へと昇華します。上長のコミットメントも得やすくなり、必要なリソース(時間、予算、人員)の確保にも繋がります。これは、担当者が上司を説得するための強力な「武器」にもなります。
具体的な連携方法としては、WEB担当者の目標設定に、コンサルティングの内製化に関連する項目を組み込むのです。
例1:MBO(目標管理制度)の場合
目標項目: WEBマーケティング運用スキルの習得と内製化体制の構築
達成基準:
例2:OKR(目標と主要な結果)の場合
O(Objective / 目標): コンサルタントから卒業し、自走できるWEBマーケティングチームを作る
KR(Key Results / 主要な結果):
このように、内製化の進捗度を客観的に測定できる指標を評価制度に組み込むことで、担当者のモチベーションを高めると同時に、会社として「どこまでできれば内製化完了と見なすか」というゴールを明確にすることができます。
内製化への道を歩み始め、担当者が育ち、社内にノウハウが蓄積されてきた時、いよいよ最終的な決断の時が訪れます。それは、「どのタイミングで、コンサルタントとの契約形態を見直すか」という、いわば卒業試験です。すべての業務を完全に内製化するのか、一部の高度な専門領域だけは外部の力を借り続けるのか。この見極めは非常に重要です。
私は、クライアントが以下の3つの最終問題に「YES」と答えられるようになった時が、一つの目安だと考えています。
【再現性の確保】「うまくいった施策の成功要因を、データに基づいて説明でき、それを別の施策で横展開できますか?」
単に施策を実行できるだけでなく、その背景にある「なぜうまくいったのか」を理解し、応用できるレベルに達しているか。これは、ノウハウが体系的に血肉となっている証拠です。
【自律的な改善】「コンサルタントがいなくても、月次レポートを作成し、それに基づいた次のアクションプランをチームで決定できますか?」
PDCAサイクルを自律的に回せるようになっているか。特に、データから課題を抽出し、解決策を導き出す「Check→Action」のプロセスが自走でき
※関連記事:マーケティング視点で考えるインスタ内製化戦略
コンサルタントが不要になる日、それが本当の成功の証
WEBコンサルティングの内製化は、決して平坦な道のりではありません。担当者の育成には時間がかかりますし、これまで外部に任せていた業務を引き継ぐことには、相応の痛みが伴います。しかし、その苦労の先には、何物にも代えがたい大きな果実が待っています。
自社のビジネスを最も深く理解している社員が、データという羅針盤を手に、自分たちの頭で考え、スピーディーに施策を実行していく。他部門と連携し、顧客の生の声をダイレクトにマーケティングに反映させていく。このような「自走できる組織」は、外部のコンサルタントがどれだけ優秀でも、決して実現できない強靭さとしなやかさを持っています。
私がこの仕事をしていて最も嬉しい瞬間は、クライアントに「もう〇〇さんの力は必要ありません」と、少し寂しそうに、でも誇らしげに言われる時です。それは、私が育てたノウハウや文化が、その組織に完全に根付いた証だからです。内製化への挑戦は、外部の力を借りながら、自社の未来を自分たちの手で創り上げていく、最も価値のある投資なのです。
執筆者
小濵 季史
株式会社カプセル 代表
デザイン歴30年以上。全国誌のデザインからキャリアをスタートし、これまでに1,000件以上の企業・サービスのブランディングを手掛けてきました。長年の経験に裏打ちされたデザイン力を強みに、感性と数字をバランスよく取り入れたマーケティング設計を得意としています。
また、自らも20年以上にわたり経営を続けてきた経験から、経営者の視点に立った実践的なマーケティング支援を行っています。成果に直結する戦略構築に定評があり、多くの企業から信頼を寄せられています。
香川県出身で、無類のうどん好き。地域への愛着と人間味あふれる視点を大切にしながら、企業の成長を支えるパートナーであり続けます。