2025.12.18 最終更新日:2025.11.10

SNSマーケティング「運用代行」の選び方|失敗しない外注先の見極め方

「SNSの重要性は分かるが、社内にリソースがない」「毎日投稿しているが、まったく成果が出ない」…。こうした切実な悩みを抱え、SNS運用代行(外注)を検討する企業が非常に増えています。私自身、SEOやWebマーケティングのコンサルタントとして多くの企業の支援に携わる中で、SNS運用代行を「戦略的に」活用し、成果を劇的に伸ばす企業と、逆に「とりあえず丸投げ」してしまい、高額なコストだけがかさんで失敗する企業の明確な「違い」を、数多く目の当たりにしてきました。

 

その差は、驚くほどシンプルです。それは、代行会社選びの「明確な基準」を持っているかどうか、ただそれだけです。良いパートナーはビジネスを加速させる強力な武器となりますが、選び方を間違えると、「フォロワー購入」のような規約違反を平気で提案する悪質な業者に捕まり、時間と費用を失うだけでなく、築き上げてきたブランド価値そのものを毀損するという最悪のリスクさえあります。

 

ここでは、数々の成功・失敗事例を見てきた専門家の視点から、失敗しない外注先の具体的な見極め方を、業務範囲の定義から料金相場、契約前に必ず確認すべき点まで、徹底的に解説していきます。

 

1. SNS運用代行で「できること」(業務範囲)

「SNS運用代行」と一口に言っても、その業務範囲は非常に広く、代行会社によって提供されるサービスは千差万別です。「どこまでやってくれるのか」を具体的に定義し、自社のニーズと合致するかを見極めることが、外注成功の第一歩となります。

 

多くの企業が「投稿作成だけ」をイメージしているかもしれませんが、プロフェッショナルな代行会社の業務は、戦略立案から実行、分析、そして改善提案まで、SNSマーケティングのPDCAサイクル全般に及びます。私が多くの代行会社とプロジェクトを推進してきた経験上、主な業務範囲は以下の5つのフェーズに大別できます。

 

  1. 戦略立案(KGI/KPI設計):
    最も重要かつ、会社の「実力」が問われるフェーズです。単に「フォロワーを増やす」といった曖昧な目標ではなく、ビジネス全体のゴール(例:売上向上、リード獲得、ブランド認知拡大)から逆算し、「SNSで何を達成すべきか(KGI)」「そのためにどの指標を追うか(KPI:例 月間Webサイト遷移数1,000件)」を明確に定義します。ターゲットペルソナの設定、競合他社のアカウント分析、どのSNSプラットフォームを選択するか(X, Instagram, TikTokなど)といった、運用の「土台」を設計します。
  2. 実行・運用(コンテンツ制作・投稿):
    一般的にイメージされる「代行業務」の中核です。戦略に基づき、具体的な月間投稿スケジュール(編集カレンダー)を作成。日々の投稿コンテンツ(画像、動画、テキスト)の企画・制作、実際の投稿作業、ハッシュタグの選定などを行います。リールやショート動画の撮影・編集までワンストップで対応できるかも、大きな選定ポイントになります。
  3. コミュニケーション(コメント・DM対応):
    SNSアカウントの「中の人」として、フォロワーからのコメントやDM(ダイレクトメッセージ)に返信する業務です。これは、単なる「顧客対応」ではなく、ファンとの関係性を築く「コミュニティ・マネジメント」という重要な役割を担います。炎上リスクを未然に防ぐための監視(ソーシャルリスニング)もここに含まれます。
  4. 分析・レポーティング:
    「投稿して終わり」にしないための必須業務です。各投稿のインサイト(リーチ、エンゲージメント、保存数など)や、アカウント全体のフォロワー数の増減、KPIの達成度を分析します。その結果を、分かりやすいレポートとして(通常は月次で)報告します。
  5. 改善提案・コンサルティング:
    分析レポートに基づき、「なぜこの投稿が伸びたのか」「なぜKPIが未達だったのか」を考察し、「来月はこういう施策を試しましょう」という具体的な改善案を提示する業務です。これが無い代行会社は、単なる「作業代行」に過ぎません。

これらの業務範囲を一覧表にまとめると、以下のようになります。

 

フェーズ 主な業務内容 代行会社に求める専門性
① 戦略立案 KGI/KPI設定、ターゲット分析、競合調査、プラットフォーム選定、運用方針の策定 マーケティング戦略、データ分析能力
② 実行・運用 企画立案、編集カレンダー作成、コンテンツ制作(撮影・編集・ライティング)、投稿作業 クリエイティブ制作能力、トレンド把握力
③ コミュニケーション コメント返信、DM対応、ソーシャルリスニング(炎上監視)、UGCの収集 コミュニティ・マネジメント能力、顧客対応スキル
④ 分析・レポーティング インサイト分析、KPI進捗管理、月次レポート作成 データ分析能力、レポーティングスキル
⑤ 改善提案 分析結果に基づく施策提案、次月の実行計画への反映、定例ミーティングでの協議 課題発見能力、コンサルティング能力

 

自社が「②の作業だけ」を外注したいのか、それとも「①から⑤まで全て」をパートナーとして任せたいのか。この「依頼スコープ(範囲)の明確化」こそが、ミスマッチを防ぐ最大の鍵です。

 

関連記事:SNSマーケティングの成功事例から学ぶポイント

 

2. 内製化と外注のメリット・デメリット徹底比較

「そもそも、本当に外注すべきだろうか?」――これは、私がクライアントから最も多く受ける相談の一つです。SNS運用は、内製化(自社で運用)するか、外注(代行会社に依頼)するか、それぞれに明確なメリットとデメリットが存在します。

 

「リソースがないから外注」という短絡的な判断は、多くの場合失敗に終わります。自社の状況と目的に照らし合わせ、どちらが最適かを冷静に判断する必要があります。私が見てきた双方の典型的な特徴を比較してみましょう。

 

  内製化(自社運用) 外注(運用代行)
メリット
  • コストを抑えられる(人件費のみ)。
  • ブランド理解が深い(自社の商品・サービスへの熱量)。
  • スピード感が早い(社内承認のみで投稿可能)。
  • ノウハウが社内に蓄積される
  • リアルな「中の人」の顔が見え、ファン化しやすい。
  • 専門的なノウハウを活用できる(アルゴリズムの知見、他社事例)。
  • リソースを即時確保できる(担当者不足の解消)。
  • 高品質なクリエイティブ(動画編集、デザイン)が期待できる。
  • 客観的な分析と改善提案がもらえる。
  • 炎上対応など、リスクマネジメントも任せられる。
デメリット
  • 担当者の負担が重い(企画・制作・分析すべて)。
  • 専門知識やノウハウがないと成果が出にくい。
  • クオリティが属人化する(担当者のスキル依存)。
  • 担当者の異動・退職で運用がストップするリスク。
  • 視野が狭くなり、施策がマンネリ化しやすい。
  • 月額の運用コストが継続的に発生する。
  • 社内にノウハウが蓄積しにくい(丸投げの場合)。
  • ブランド理解のすり合わせに時間がかかる。
  • レスポンスや投稿のスピード感が遅れる場合がある(確認・修正の往復)。
  • 悪質な業者を選んでしまうリスク。

 

この表から分かるように、どちらかが絶対的に優れているわけではありません。例えば、創業期のスタートアップで、創業者の「熱量」を直接届けたい場合は、拙くても内製化が向いているでしょう。私が見てきた中小企業の成功例でも、社長自身が「中の人」として日々発信し、強力なファンコミュニティを築いているケースは多いです。

 

一方で、ある程度事業が成熟しており、「専門的なノウハウ」や「高品質なクリエイティブ(特に動画)」を導入して、競合他社に差をつけたいフェーズであれば、外注が非常に有効な戦略となります。最近のトレンドとしては、「完全内製化」でも「完全外注(丸投げ)」でもない、「ハイブリッド型」を選択する企業が最も成果を上げています。例えば、

 

  • 戦略立案(①)と分析・改善提案(④⑤)は、専門知識を持つ代行会社に依頼。
  • 日々の投稿(②)やコメント対応(③)は、スピードと熱量を重視して自社(内製)で行う。

このように、自社の強みを活かしつつ、足りない部分だけをプロの力で補う。これが、現代のSNS運用における最も賢いリソース配分と言えるでしょう。

 

 

3. 代行会社の「得意分野」(業界・SNS)を見極める

運用代行会社選びで非常に多く見られる失敗が、「大手だから」「有名だから」という理由だけで選んでしまうケースです。

 

重要なのは、会社の「規模」ではありません。自社の「業界(ジャンル)」と「攻略したいSNS」に、その代行会社が深い知見と実績を持っているか、という「専門性(得意分野)」です。

 

例えば、X(旧Twitter)で「中の人」としてキャラクターを立て、日々トレンドを追った即時性の高い投稿で「バズ」を生み出すのが得意な会社と、Instagramで「世界観」を重視した美しい画像やリール動画を作り込み、D2C(Direct to Consumer)のEC売上に繋げるのが得意な会社とでは、求められるスキルセットが全く異なります。私がクライアントの代行会社選定(コンペ)に同席する際は、必ず「そのSNSで、私たちの業界の成功事例を持っていますか?」と質問します。

 

主要なSNSプラットフォームと、それぞれで特に親和性の高い業界(ジャンル)の一般的な傾向をまとめます。自社がどこに当てはまるかを確認し、その分野に強い会社を探すことが重要です。

 

SNSプラットフォーム 特徴・強み 特に相性の良い業界・目的
Instagram (インスタグラム) ビジュアル(画像・動画)中心。リールでの新規発見。ショッピング機能との連携。 D2C、アパレル、コスメ、飲食、旅行、インテリア。ブランドの世界観構築、EC誘導。
X (旧Twitter) リアルタイム性、情報の拡散力(リポスト)、テキストベースのコミュニケーション。 BtoC全般(特にキャンペーン)、BtoB(認知)、メディア、ゲーム。即時性の高い情報発信、UGCの創出、顧客サポート。
TikTok (ティックトック) ショート動画専門。強力なレコメンド(おすすめ)機能による爆発的な認知拡大。 若年層向け商材全般、エンタメ、音楽、食品、アプリ。トレンドの創出、UGC(チャレンジ企画)による拡散。
Facebook (フェイスブック) 実名制による信頼性。高めの年齢層。詳細なターゲティング広告。 BtoB(ビジネス)、不動産、金融、採用。既存顧客との関係構築、高単価商材、オウンドメディアへの誘導。
LINE (ライン) 国内の高いMAU(月間アクティブユーザー)。クローズドな1to1コミュニケーション。 小売、飲食、美容室(店舗型ビジネス)。リピート促進、クーポン配布、顧客の囲い込み(CRM)。

 

「うちはBtoB企業だから、XとFacebookに強い会社を探そう」「私たちはコスメブランドだから、Instagramのリール動画制作とUGC創出が得意な会社じゃないとダメだ」。このように、自社の立ち位置を明確にすれば、選ぶべきパートナーの「顔」も自ずと見えてくるはずです。

 

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4. 「フォロワー購入」を提案する業者はNG

これはテクニック以前の、大前提となる「最低限のルール」です。

 

もし、商談や提案の段階で、代行会社の担当者が「短期間で確実にフォロワーを増やせます」「1万人フォロワーパッケージ」といった言葉や、「フォロワー購入」を少しでも匂わせるような提案をしてきたら、その場で即刻、商談を打ち切ってください

 

なぜなら、これはSNSプラットフォームの利用規約に明確に違反する「スパム行為」であり、アカウントが凍結される最大のリスク要因だからです。私自身、過去に他社がフォロワー購入に手を出した結果、アカウントが凍結され、ゼロから再スタートする羽目になった企業を何社も知っています。それまで積み上げた信頼と資産が一瞬で消え去るのです。

 

仮に凍結を免れたとしても、購入したフォロワーに何の意味があるでしょうか?その実態は、実在しないボット(自動プログラム)や、あなたのビジネスに全く興味のない海外のアカウントが大半です。彼らは、あなたの投稿に「いいね」も「コメント」もせず、もちろん商品を買うこともありません。

 

結果として、「フォロワー数は多いのに、エンゲージメント(反応)が全くない」という、アルゴリズムから「価値のないアカウント」と判断される、最も質の悪いアカウントが爆誕します。これは、オーガニック(自然な)リーチの妨げにさえなります。

この「フォロワー購入」という悪魔の誘惑を見分けるのは簡単です。以下の点をチェックしてください。

 

  • 短期間」での「」の「保証」をうたっていないか。
    (例: 「1ヶ月で1万人増加保証」)
  • エンゲージメント(いいね、保存)」ではなく、「フォロワー数」だけをやたらと強調してこないか。
  • 「どうやって増やすのか」という具体的な施策(戦略)を説明せず、「独自のロジックで」などと曖昧な言葉で濁していないか。

本物のプロフェッショナルは、「数」ではなく「」を重視します。彼らが提案するのは、「フォロワー数の保証」ではなく、「ターゲットに合った有益なコンテンツを継続的に発信し、エンゲージメントを高めた結果として、質の高いフォロワー(=ファン)が自然に増えていく」という、地道で王道な戦略だけです。そのプロセスを代行・支援するのが彼らの仕事なのです。

 

目先の「数字」に飛びつきたくなる気持ちは分かりますが、その誘惑は、あなたのブランドを破滅させる「毒リンゴ」であると肝に銘じてください。

 

次に読む:SNSマーケティング初心者が最初に知るべきこと

 

5. 料金体系(月額固定・成果報酬)の比較と相場

運用代行を検討する上で、最も気になるのが「費用(料金)」でしょう。代行会社の料金体系は、主に「月額固定型」と「成果報酬型」の2つに大別されます。

 

結論から言えば、SNS運用代行の主流は「月額固定型」です。なぜなら、SNS運用は広告と異なり、短期間で直接的な「成果(=売上)」を保証することが難しく、ブランド認知やファン育成といった「資産」を中長期で築いていく活動だからです。

 

それぞれの料金体系の特徴と、私が把握している業界の「相場観」を比較します。

 

料金体系 月額固定型 成果報酬型
概要 毎月一定額の費用を支払う。業務範囲(戦略立案、投稿数、レポーティングなど)に応じて金額が変動する。 「フォロワー1人増加につき〇円」「いいね1件につき〇円」など、特定の成果に応じて費用が発生する。
メリット ・予算が組みやすい(コストが変動しない)。
・中長期的な戦略(ブランディング、ファン育成)に取り組みやすい。
・業務範囲が明確。
・初期費用を抑えられる場合がある。
・成果が出なければ費用が発生しない(ように見える)。
デメリット ・短期間で成果が出なくても、費用は発生する。 ・「成果」の定義が曖昧だとトラブルになる。
・「フォロワー数」を成果にすると、前述の「フォロワー購入」など、質の低い施策につながる温床となる。
まともな代行会社は、この体系をほとんど採用しない。

 

「成果報酬型」は一見リスクがないように聞こえますが、私はこの体系を推奨しません。特に「フォロワー数」を成果の指標(KPI)に置くことは、前述の通り「質の低いフォロワー」を集めるインセンティブになりかねず、非常に危険です。したがって、信頼できるパートナーを探すのであれば、「月額固定型」の会社と交渉するのが王道です。

 

では、「月額固定型」の相場はどれくらいなのでしょうか? これは「どこまで(業務範囲)やってもらうか」で大きく変動します。

 

  • 月額 5〜10万円:
    「コンサルティング」や「分析レポート」のみ。実作業(投稿作成など)は自社で行う、いわば「家庭教師」プラン。
  • 月額 10〜30万円:
    最もボリュームゾーン。「日々の投稿代行(例:週3回)」「コメント監視」「月次レポート」など、基本的な運用を任せるプラン。戦略立案や動画編集のレベルは会社によります。
  • 月額 30〜50万円:
    「戦略立案」から「高頻度の投稿(例:毎日)」「高品質なリール動画制作」「コメント・DMへの積極的な返信」「詳細な分析と月次改善提案」まで、PDCA全体を包括的に任せるプラン。
  • 月額 50万円〜:
    上記に加え、「インフルエンサー施策」「SNS広告の運用」「複数アカウントの横断管理」「大規模キャンペーンの企画実施」など、SNSマーケティング全体を統括するパートナーとしての契約。

注意すべきは、「安かろう悪かろう」が明確に存在する世界だということです。月額10万円で「動画も作り放題、毎日投稿、戦略も全部やります」という業者は、ほぼ間違いなく低品質なテンプレート作業しかできません。自社が求める「業務範囲」と「クオリティ」に見合った、適正な価格を提示している会社を選ぶべきです。

 

 

6. 「実績」の確認方法(数字と事例)

代行会社を選定する際、誰もが「実績(事例)」を確認します。しかし、この「実績」の見方にも、プロと素人の差が出ます。

素人(失敗する企業)は、「なんとなく凄そうな数字」に目を奪われます。
(例:「フォロワー数10万人達成!」「再生回数100万回突破!」)

 

一方で、プロ(成功する企業)は、「自社の目的にとって意味のある事例か」を冷静に見極めます。
(例:「フォロワー数は5,000人だが、そこからのECサイト流入で月間売上300万円を達成したD2Cブランドの事例」)

 

私が選定の際に行う「実績の確認方法」は、単に「事例を見せてください」ではありません。「私たちの業界(または類似業界)で、私たちの課題(例:認知拡大、リード獲得)を解決した事例を、具体的な『数字』と『施策』のセットで教えてください」と依頼します。

 

確認すべきポイントをチェックリスト化します。

 

確認ポイント NGな実績提示 (表面的) OKな実績提示 (本質的)
① 業界・ジャンル 自社と全く関係ない業界(例:BtoC飲食)の華やかな実績ばかり見せる。 自社と同業界、または類似業界(例:BtoBのIT)での実績を提示できる。
② 課題と目的 「フォロワー数を増やした」という話しかない。 「(クライアントの)『リード獲得が課題』に対し、Xでウェビナー集客を行い、月50件のリード獲得に繋げた」など、課題解決のストーリーがある。
③ 数字の「質」 「フォロワー数」「再生回数」といった「量」の数字だけ。 エンゲージメント率」「保存率」「Webサイト遷移数」「CVR(転換率)」など、「質」の数字を開示できる。
④ 施策の具体性 「頑張って毎日投稿しました」レベルの精神論。 ペルソナ分析に基づき、A/Bテストでこの勝ちパターン(投稿フォーマット)を見つけた」など、具体的な戦術を論理的に説明できる。

 

特に重要なのが、③の「数字の質」です。フォロワー数10万人でもエンゲージメント率が0.1%のアカウントより、フォロワー数1万人でもエンゲージメント率が5%のアカウントの方が、遥かに資産価値が高い。この「本質」を理解しているパートナーかどうかを見極めてください。

 

関連ニュース:集客につながるSNSマーケティングのコツ

 

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7. 担当者との相性とレスポンス速度

これは非常に人間的な、しかし最も重要な選定基準の一つです。SNS運用代行は、システムを導入するのとはワケが違います。あなたの会社の「顔」として、日々発信を行う「」との契約です。

 

会社の「実績」がどれだけ立派でも、実際にあなたのアカウントを担当する「現場の担当者」のスキルと熱量が低ければ、成果は絶対に出ません。

 

私がコンペで必ず確認するのは、以下の2点です。

 

  1. 提案の「熱量」と「ブランド理解」:
    商談の場で、こちらのサービスや商品を「自分ごと」として理解しようとしてくれていますか? 汎用的なテンプレート資料を読み上げるだけの担当者か、それとも「御社のこの強みは、SNSでもっとこう見せるべきです!」と、事前にリサーチした上で「具体的なアイデア」を提案してくれる担当者か。熱量は必ず施策の質に反映されます。
  2. コミュニケーションの「相性」と「速度」:
    SNSは「即時性」が命です。トレンドの発生、ユーザーからの問い合わせ、万が一の炎上リスク…。これらに対応する際、担当者の「レスポンス速度」は死活問題となります。「メールを送ったが3日間返事がない」…こんなパートナーとは組んではいけません。契約前に、チャットツール(Slack, Chatworkなど)でのコミュニケーションが可能か、緊急時の連絡体制はどうなっているか、を必ず確認してください。

また、担当者が「SNSが好きで、個人でも使いこなしている」かどうかも、意外と重要です。アルゴリズムの微妙な変化や、ユーザーの「空気感」は、教科書的な知識ではなく、日々SNSに触れている「肌感覚」からしか得られないからです。商談の場で、「〇〇さんご自身は、最近どのSNSに注目していますか?」と、雑談レベルで聞いてみるのも一つの手です。

 

参考:SNSマーケティングを支えるツール紹介

 

8. 契約前に確認すべき「レポートライン」と「改善提案」

無事に信頼できそうな会社が見つかり、いざ契約へ。その「前」に、必ず詰めなければならないのが、「仕事の進め方(ワークフロー)」の確認です。ここが曖昧なままスタートすると、「こんなはずじゃなかった」というトラブルに発展します。特に重要なのが、「レポートライン(報告体制)」と「改善提案(PDCA)」の有無です。

 

レポートライン」とは、誰が、いつ、何を、どのように報告するか、というルールです。

改善提案」とは、その報告(データ)に基づき、次に何をすべきかを提案してくれるか、というコンサルティングの領域です。

 

私が定義する「悪い代行会社」と「良い代行会社」のワークフローを比較します。

 

項目 悪い代行会社 (作業代行) 良い代行会社 (戦略パートナー)
① レポート ・インサイトの「数字」を羅列したデータだけをメールで送ってくる。
・「フォロワーが〇人増えました」という結果報告のみ。
・「なぜ増えたか/減ったか」の「考察」が必ず書かれている。
・「どの投稿がKPI(例:サイト遷移)に貢献したか」が分析されている。
② 定例会議 ・そもそも定例会議がない。
・あっても、レポートの「読み合わせ」だけで終わる。
月1回、必ず「改善提案」の場(対面またはWeb会議)を設けてくれる。
・データに基づき「次月はこの施策(A/Bテスト)を試しましょう」と具体的な提案がある。
③ 投稿の承認 ・投稿内容をすべて自社でチェック(校正)する必要があり、手間が内製と変わらない。 ・レギュレーション(ガイドライン)を共有し、信頼関係を築いた上で、ある程度「お任せ(承認不要)」の枠を作るなど、効率的なフローを提案してくれる。

 

契約書にサインする前に、必ず「月次レポートのサンプルを見せてください」と依頼してください。そのレポートに「考察」と「次月への提案」の欄がなければ、その会社はPDCAを回す気がありません。単なる「作業代行」会社である可能性が極めて高いと判断できます。

 

 

9. SNSマーケティングの「丸投げ」が失敗する理由

ここまで、良い代行会社の見極め方を解説してきました。しかし、どれだけ優秀な代行会社を選んだとしても、発注側(自社)のスタンスが「丸投げ」である限り、そのプロジェクトは100%失敗します。これは、私がこの業界で見てきた、揺るぎない「真実」です。

 

「お金を払っているんだから、全部うまくやってくれるんでしょ?」

この考えが、なぜ最悪の結果を招くのか。理由は3つあります。

 

  1. 「熱量」と「一次情報」が伝わらないから:
    SNSで人の心を動かすのは、その企業(ブランド)ならではの「熱量」や、現場でしか知り得ない「リアルな情報(一次情報)」です。代行会社はマーケティングのプロですが、あなたのビジネスのプロではありません。自社の商品開発の苦労話、お客様からの感動的な一言…。こうした「魂」のこもった情報を自社が提供(インプット)しなければ、代行会社が作るコンテンツは、どこにでもある「薄っぺらい」ものにしかなりません。
  2. スピード感が失われるから:
    SNSは「今」が重要です。代行会社が「こんなトレンドが来ています!」と提案しても、自社(発注側)の確認・承認プロセスが遅ければ、投稿する頃にはもうトレンドは終わっています。丸投げ=「自社は確認するだけ」という受け身の姿勢は、SNSの命であるスピード感を殺します。
  3. 社内にノウハウが全く残らないから:
    これが最大の問題です。丸投げを続けると、「なぜ今月は成果が出たのか(出なかったのか)」という貴重な知見(ノウハウ)が、すべて代行会社の中にしか残りません。結果、いつまで経っても自社は代行会社に「依存」し続けることになります。もし、その代行会社がサービスを停止したら? 自社のSNSマーケティングは、その瞬間にゼロに戻ってしまうのです。

 

SNS運用代行は、「家の掃除」や「税務処理」といった、完全に切り離せる業務の代行とは根本的に異なります。それは、自社の「ブランド(人格)」そのものを、外部の人間と「共同で」運営するという、極めて難易度の高いプロジェクトなのです。

 

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10. 代行会社と二人三脚で成功するための「自社の役割」

では、失敗しない「丸投げ」の対極にある、成功する「二人三脚」とは、具体的にどのような状態でしょうか?それは、代行会社を「下請けの業者」として扱うのではなく、「自社のマーケティング部門の一員(パートナー)」として迎え入れ、発注側(自社)が担うべき「役割」を明確に果たすことです。

 

私が考える、SNS運用を成功させるために「発注側(自社)が絶対にやるべき役割」は以下の通りです。

 

発注側(自社)の役割 代行会社(受注側)の役割
① KGI(最終ゴール)の明確な提示
(例:「SNS経由の売上を月500万にする」)
KPI(中間指標)への分解と戦略立案
(例:「そのために、サイト遷移数を月〇件、CVR〇%を目指す戦略を立てる」)
②「一次情報(ネタ)」の継続的な提供
(例:新商品の開発秘話、お客様の声、社内の風景など)
「SNS映えするコンテンツ」への加工
(例:そのネタをリール動画やカルーセル投稿に仕立て上げる)
③ スピーディな確認・承認(フィードバック)
(例:投稿内容の最終確認、方向性のジャッジ)
迅速な実行とレポーティング
(例:承認された内容の投稿、分析、改善提案)
④「代行会社の提案」を真剣に検討する姿勢
(例:月次定例会への参加、施策実行の最終判断)
「プロとしての客観的な改善提案」
(例:データに基づき、「A案よりB案が良い」と根拠を持って進言する)

 

このように、「ビジネスの根幹(ゴール)」と「現場の熱量(一次情報)」は自社が握り、「専門的な戦略」と「クリエイティブへの落とし込み」をプロに任せる。この役割分担(RACI)が明確であれば、プロジェクトは必ず成功へと向かいます。

 


運用代行は「パートナー」。丸投げ思考を捨て、自社の成長を加速させる能動的な選択を

SNS運用代行の選び方について、業務範囲から費用相場、そして発注側の「心構え」まで、幅広く解説してきました。

 

この記事で最も伝えたかったことは、「運用代行会社を選ぶ」という行為は、単なる「外注先」を決める作業ではなく、「自社の未来を託すパートナー」を選ぶ行為に等しいということです。そして、そのパートナーシップを成功させる鍵は、代行会社の能力以上に、発注側である「あなた自身の覚悟」にかかっています。

 

「丸投げ」という思考を捨て、自社の「武器」となる情報や熱量を惜しみなく提供し、代行会社の専門知識を「吸収」し尽くす。その能動的な姿勢こそが、SNSマーケティングを成功に導く、唯一の指針となります。読者の皆様が「明日から」実践できる、ハードルの低い具体的な行動は以下の2つです。

 

  1. まずは、現在検討している(あるいは契約中の)代行会社の「月次レポート」を見返してみてください。そこに「数字の羅列」だけでなく、「具体的な考察と改善提案」が書かれているかを確認することが重要です。
  2. 次に、自社のSNS運用を「外注」するとして、代行会社に「これだけは絶対に伝えておきたい」という自社の「強み」や「想い」を、3つ書き出してみてください。それこそが、運用代行を成功させるための「魂」となります。

その準備ができた時、初めて「SNS運用代行」という選択肢が、あなたのビジネスを加速させる強力な「戦略」になるのです。

 

関連文献:成功するSNSマーケティングの設計図

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執筆者

株式会社カプセル 代表

デザイン歴30年以上。全国誌のデザインからキャリアをスタートし、これまでに1,000件以上の企業・サービスのブランディングを手掛けてきました。長年の経験に裏打ちされたデザイン力を強みに、感性と数字をバランスよく取り入れたマーケティング設計を得意としています。
また、自らも20年以上にわたり経営を続けてきた経験から、経営者の視点に立った実践的なマーケティング支援を行っています。成果に直結する戦略構築に定評があり、多くの企業から信頼を寄せられています。
香川県出身で、無類のうどん好き。地域への愛着と人間味あふれる視点を大切にしながら、企業の成長を支えるパートナーであり続けます。

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