2025.12.24 最終更新日:2025.11.10

Pinterest(ピンタレスト)広告の可能性|高購買意欲層にアプローチするSNS広告

「SNS広告」と聞くと、多くのマーケターがInstagramやX(旧Twitter)、TikTokを思い浮かべるかもしれません。しかし、もしあなたのビジネスが「ビジュアル」と「ライフスタイル」に関連し、特に購買意欲の高い層にアプローチしたいと本気で考えているなら、今、最も注目すべきプラットフォームがあります。それがPinterest(ピンタレスト)です。

 

Pinterestを「女性向けのオシャレなSNS」とだけ捉えているとしたら、それは大きな機会損失です。私自身、SEOやWebマーケティングの専門家として様々なプラットフォームの広告効果を分析してきましたが、Pinterestはそのどれとも異なる「異質な特性」を持っています。それは、ユーザーが「交流」や「暇つぶし」のためではなく、「未来の自分のためのアイデア」を能動的に「検索」しに来る場所であるという点です。

 

この独自のユーザーマインドこそが、広告を「邪魔者」ではなく「探していた情報」として受け入れさせる、広告主にとって理想的な環境を生み出しています。ここでは、そのユニークな可能性から、具体的な運用テクニック、他SNSとの明確な使い分けまで、プロの視点で徹底的に解説していきます。

 

1. Pinterest(ピンタレスト)とは(ユーザー層・特性)

まず、Pinterestの「現在地」を正しく理解することから始めましょう。Pinterestは、単純なSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)ではありません。その本質は、「アイデア」を発見し、保存(ピン)し、整理するための「ビジュアル発見エンジン」です。

 

ユーザーは、インテリア、レシピ、ファッション、旅行先など、あらゆるインスピレーションをビジュアル(画像や動画)で検索します。気に入った「ピン」は、自分の「ボード」と呼ばれるテーマ別のコレクションに保存されます。この「保存(リピン)」という行為が、ユーザーの「興味・関心」のデータベースを構築していくのです。

 

この時点で、他の主要SNSとの決定的な違いが浮かび上がってきます。

 

  • X(旧Twitter)は、「今」起きていることをリアルタイムで共有するプラットフォームです。
  • InstagramやFacebookは、多くの場合、「過去」の出来事(昨日食べたディナーや、先週の旅行)を記録・共有する場所です。

 

対してPinterestは、ユーザーが「未来」の計画のためにアイデアを探す場所なのです。この「未来志向」が、Pinterestのユーザー層と特性をユニークなものにしています。

 

【ユーザー層と特性】

  • ユーザー規模: 日本国内でも月間アクティブユーザー数は着実に増加しており、無視できない規模のプラットフォームに成長しています。
  • 性別・年齢層: 伝統的に「女性(特にF1層、F2層)」の利用者が多いとされてきましたが、近年は「インテリア」「キャンプ」「メンズファッション」「金融」といったカテゴリで男性ユーザーも顕著に増加しています。購買力のあるミレニアル世代が中核をなしています。
  • 最大の特性(マインドセット): ユーザーは「能動的」です。「何かいいものないかな」という漠然とした状態ではなく、「週末のディナーのレシピを探したい」「引っ越し先の1LDKのレイアウトを考えたい」といった、具体的な「目的」を持って検索しています。
  • 購買へのポジティブさ: 驚くべきことに、Pinterestユーザーの多くは、プラットフォーム上で新しいブランドや商品を発見することに「前向き」です。彼らにとって、アイデア探しとショッピングは地続きの体験なのです。

この特性の違いを、他のSNSと比較してみましょう。

 

プラットフォーム 主な目的 時間軸 ユーザーマインド
Pinterest アイデアの発見・計画 未来 能動的(検索・収集)、購買に前向き
Instagram 交流・発見・記録 過去~現在 受動的(閲覧)、衝動的(発見)
X (旧Twitter) 情報収集・交流 現在(リアルタイム) 能動的(情報収集)、受動的(閲覧)

 

参考ページ:SNS広告のトレンドとこれからの展望

 

2. 「未来の行動」のために検索するプラットフォーム

Pinterestの核心的価値は、見出しにもある通り「未来の行動」のために使われる点にあります。これは、広告主にとって計り知れないほどの価値を持ちます。

 

考えてみてください。ユーザーが「結婚式 ドレス」と検索するとき、彼女は「今」ドレスを買うわけではありません。おそらく「半年後」や「1年後」の結婚式という「未来のプロジェクト」のために情報を集めています。このマインドセットが、なぜ広告に最適なのでしょうか?

 

  1. 検討の「初期段階」で接触できる
    ユーザーはまだ「どのブランドのドレスにしよう」と決めていません。彼らは純粋に「良いアイデア」を探しています。この「ブランド未決定」の段階で、あなたのブランド(広告)が「最高のアイデア」として自然に表示されれば、第一想起(最初に思い浮かぶブランド)を獲得することが可能です。
  2. 広告が「情報」として受け入れられる
    他のSNSで受動的にタイムラインを眺めている時の広告は、時に「邪魔者」として扱われます。しかし、Pinterestで「未来の計画」に夢中になっているユーザーにとって、関連性の高い広告は「探していた情報(アイデア)の一つ」として、ポジティブに受け入れられ、保存(ピン)される対象にさえなります。
  3. 検討期間の長い「高単価商材」と相性が良い
    「家を建てる」「車を買う」「リフォームする」といった、検討に数ヶ月~数年かかるライフイベント関連の商材は、Pinterestと抜群の相性を誇ります。ユーザーは「ボード」を作成し、長期にわたって情報を収集・整理しますが、広告主はその「長期的な検討プロセス」に寄り添い、自社の商品を継続的にアピールできるのです。

私自身、SEO(検索エンジン最適化)を専門としていますが、Google検索とPinterest検索は似て非なるものです。この違いを理解することが重要です。

 

検索プラットフォーム Google検索 Pinterest検索
検索の意図 顕在的・言語的
(例:「〇〇 故障 修理」)
明確な「悩み」の解決。
潜在的・視覚的
(例:「〇〇 リビング レイアウト」)
曖昧な「願望」の具体化。
時間軸 現在~直近の未来 数ヶ月~数年先の未来
ユーザーの態度 比較検討、答え(正解)探し 発見、インスピレーション、収集

 

Googleが「答え」を提示する場所なら、Pinterestは「可能性(アイデア)」を提示する場所なのです。この「可能性」に自社の商品を滑り込ませるのが、Pinterest広告の本質です。

 

 

3. Pinterest広告のフォーマット(静止画・動画)

Pinterest広告は、オーガニック(通常の)ピンとシームレスに溶け込むように設計されています。ユーザーの「アイデア探し」を邪魔しない、多彩なフォーマットが用意されています。

 

  • 静止画ピン(スタンダード):
    最も基本的で、最も一般的なフォーマット。高品質で魅力的な1枚の画像(縦長推奨)と、それが何であるかを説明するタイトル・説明文で構成されます。ユーザーの目を引き、保存(ピン)やクリックを促します。
  • 動画ピン:
    動きと音で、より多くの情報を伝えられるフォーマット。特に「ハウツー(HowTo)」や「ビフォーアフター」、商品の使用シーンを見せるのに適しています。画面幅いっぱいに表示される「最大幅動画」は、非常に高い没入感を生み出します。
  • カルーセルピン:
    1つのピン(広告)の中で、複数の画像(2〜5枚)をスワイプして見せることができます。商品の異なるアングル、複数のラインナップ、手順の紹介、ストーリーテリングなど、静止画1枚では伝えきれない情報を盛り込むのに最適です。
  • ショッピングピン(カタログ連携):
    ECサイトの商品カタログと連携し、ピンに価格や在庫状況をリアルタイムで表示できるフォーマット。ユーザーをシームレスに購入ページへ誘導します。
  • アイデアピン広告:
    複数の動画、画像、テキストを組み合わせた、没入型のストーリーテリングフォーマット。ブランドの認知度向上や、深いエンゲージメントの構築に向いています。

これらのフォーマットを、広告の「目的」に応じて使い分けることが重要です。

 

広告フォーマット 主な特徴 推奨される広告目的
静止画ピン 高画質なビジュアル1枚。最もシンプル。 認知拡大、比較検討、クリック(サイト遷移)促進
動画ピン 動きと音で魅了する。ハウツーや使用感の伝達に優れる。 ブランド認知、比較検討(商品の使い方を理解させる)
カルーセルピン 複数枚の画像(または動画)をスワイプ。手順や複数商品の紹介。 比較検討(詳細な機能紹介)、クリック促進
ショッピングピン 価格、在庫情報をリアルタイム表示。EC連携。 コンバージョン(購入促進)、リターゲティング
アイデアピン広告 全画面の没入型ストーリーテリング。複数素材の組み合わせ。 ブランド認知(世界観の伝達)、エンゲージメント構築

 

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4. 「キーワードターゲティング」の活用

Pinterest広告が他のビジュアル系SNS広告と一線を画す最大の理由。それは「キーワードターゲティング」が極めて強力であることです。

 

前述の通り、Pinterestは「検索エンジン」です。ユーザーは「言葉」を使って、自分の欲しいビジュアル(アイデア)を探します。この「検索キーワード」に直接広告を配信できるのです。これは、Googleの検索連動型広告(リスティング広告)と全く同じ思想です。

 

【仕組み】

広告主は、ユーザーが検索するであろうキーワード(例:「時短 レシピ」「キャンプ おしゃれ」「20代 メイク」)を指定します。ユーザーがそのキーワード、あるいは関連するキーワードで検索した際、その検索結果フィードにあなたの広告ピンが自然に紛れ込んで表示されます。

 

【活用メリット】

  • 極めて高い関連性: ユーザーは「今まさに」その情報を探しています。そこにドンピシャの広告(アイデア)を提示できるため、クリック率や保存率は当然高くなります。
  • 顕在的なニーズへのリーチ: 「〇〇が欲しい」「〇〇をしたい」という明確な意図(インテント)を持ったユーザーに、無駄なくアプローチできます。
  • ニッチな需要の開拓: 「二人暮らし 1LDK レイアウト」のようなロングテールなキーワード(複数の単語の組み合わせ)で検索する、具体的な計画を持つユーザーにピンポイントで訴求できます。

私の経験から言っても、この「キーワード(言葉)」と「ビジュアル」が直結しているプラットフォームは非常に稀有です。成功の鍵は、Googleでのキーワード選定と同様に、ユーザーの「生の言葉」をいかに想像し、収集できるかにかかっています。

 

単に「インテリア」と設定するのではなく、「インテリア 北欧」「インテリア 一人暮らし 女子」「インテリア 韓国風」といった、ユーザーの「検索意図」を細分化してキーワードを設定することが、高い広告効果を生むための第一歩です。Pinterestの検索窓に表示される「サジェストキーワード(検索候補)」は、そのための宝の山と言えるでしょう。

 

関連文献:初めてでも成果が出せるSNS広告の始め方

 

5. 「興味・関心」ターゲティング

キーワードターゲティングが「今、探している」という顕在層にアプローチする「点の施策」だとすれば、「興味・関心ターゲティング」は、「これから探すかもしれない」潜在層にアプローチする「面の施策」です。

 

【仕組み】

Pinterestは、ユーザーが日頃からどのようなピンを閲覧し、どのようなボードに保存しているかをAIによって学習・分析しています。その結果、各ユーザーを「美容」「食品」「DIY」「旅行」といった、数千種類もの細かい「興味・関心カテゴリ」に分類しています。

 

このターゲティングでは、「美容カテゴリに興味がある人」といった、より広範なユーザー群に対して広告を配信します。

 

【キーワードターゲティングとの比較】

この2つのターゲティングは、どちらが優れているというものではなく、目的によって使い分けるべきです。

 

ターゲティング手法 キーワードターゲティング 興味・関心ターゲティング
アプローチ対象 顕在層(今まさに検索している人) 潜在層(そのカテゴリに興味がある人)
ユーザーの意図 明確(例:「〇〇が欲しい」) 曖昧(例:「美容全般に興味がある」)
主な広告目的 コンバージョン(購入、申込)、比較検討 認知拡大(リーチ)、ブランディング
プロの視点 CPA(獲得単価)が合いやすいが、リーチ数は限定的。 リーチは広がるが、意図が曖昧なためCPAは悪化しやすい。

 

プロの運用者は、この2つを組み合わせて使います。例えば、「『インテリア』に興味がある人(興味・関心)」が、「『北欧』と検索(キーワード)」した時に広告を出す、といった「掛け合わせ」を行うことで、リーチの広さと関連性の高さを両立させることが可能です。これがPinterest広告運用の醍醐味の一つです。

 

 

6. EC・D2Cとの「カタログ連携」

Pinterest広告が、特にEC(Eコマース)事業者やD2C(Direct to Consumer)ブランドにとって、他のどの広告プラットフォームよりも強力な「最終兵器」となり得る理由。それが「カタログ連携(データフィード連携)」機能です。これは、私がクライアントのECサイト支援で、その効果を目の当たりにしてきた、まさに革命的な機能です。

 

【仕組み】

自社ECサイトが持つ「商品カタログ(商品名、価格、在庫、商品画像URLなどが記載されたデータファイル)」をPinterestにアップロード(または自動連携)します。

 

【これにより、何が起こるか】

  1. 「ショッピングピン」の自動生成:
    あなたのECサイトにある全商品(例えば10,000点あったとしても!)が、自動的にPinterest上の「ピン」として一括生成されます。手作業で一つずつピンを作成する必要は一切ありません。
  2. 価格・在庫の「リアルタイム更新」:
    ECサイト側で「セール価格に変更」したり、「在庫切れ」になったりした場合、その情報が自動でPinterest上のピンにも反映されます。これにより、「広告を見てクリックしたら、もう売り切れていた」という最悪のユーザー体験を防ぐことができます。
  3. シームレスな購入体験:
    ユーザーは、あなたの広告ピン(ショッピングピン)を見て、「価格」や「在庫」をその場で確認し、クリックすれば即座にECサイトの「購入ページ」に直接遷移できます。アイデア探しから購買までが、一直線で繋がります。
  4. 「ショップ」タブの設置:
    あなたのアカウントのプロフィールページに、カタログ連携した商品を一覧表示できる「ショップ」タブが自動で設置され、まるでPinterest内にもう一つのECサイトがあるかのような体験を提供できます。

この機能の登場により、Pinterestは単なる「アイデア発見の場」から、「アイデア発見から購買までが完結する場」へと進化しました。ShopifyやEC-CUBEなど、多くの主要ECカートシステムがこの連携に標準、またはプラグインで対応しています。EC事業者であれば、この機能を使わない手はありません。

 

付随記事:広告初心者でもわかるSNS広告の基礎知識

 

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7. 「アイデアピン(動画)」の広告活用

「アイデアピン」は、Instagramの「リール」や「ストーリーズ」に相当する、Pinterest独自の没入型コンテンツフォーマットです。そして、これは広告(アイデアピン広告)としても活用できます。

 

【アイデアピンの特徴】

  • 縦型の全画面表示: スマートフォンの画面いっぱいに表示され、ユーザーの注意を独占します。
  • 複数素材の組み合わせ: 複数の動画、画像、テキスト、音楽を組み合わせて、一つの「ストーリー」を作ることができます。
  • タップ形式: ユーザーがタップすることで、次のページ(シーン)へと進んでいきます。
  • 保存とエンゲージメント: ユーザーはピン全体を保存できるほか、コメントやリアクションを残すことができます。

【広告としての活用法】

アイデアピン広告は、静止画広告よりもはるかにリッチな情報を伝えられるため、特に「ブランドの世界観」や「商品の使用プロセス」を見せるのに最適です。

例えば、

 

  • 美容・コスメ業界: 「新作ファンデーションを使った、崩れないベースメイク術」(動画でステップを解説)
  • 食品業界: 「このパスタソースを使った、10分でできる週末ごちそうレシピ」(材料→調理→完成までをテンポよく見せる)
  • DIY・インテリア業界: 「普通の棚が、この塗料で北欧風に生まれ変わるまで」(ビフォー→作業風景→アフター)

このような「ハウツー(HowTo)」や「チュートリアル」は、Pinterestユーザーが元々求めている「アイデア」そのものです。そのため、広告でありながら非常に高いエンゲージメント(保存、コメント)が期待できます。

 

アイデアピン広告 メリット デメリット・注意点
概要 ・全画面表示で没入感が非常に高い。
・ストーリーテリングが可能で、ブランドや商品の魅力を深く伝えられる。
・「ハウツー」系コンテンツと相性が良く、高いエンゲージメントが期待できる。
制作コストが高い(静止画に比べ、動画編集や複数素材の準備が必要)。
・最初の1〜2秒(1ページ目)でユーザーの心を掴めないと、すぐにスキップされる。

 

まずはオーガニック(通常の投稿)でアイデアピンをいくつか投稿し、ユーザーの反応(保存率や完了率)が良かったものを広告として配信する(ブーストする)のが、失敗の少ない進め方です。

 

関連記事はこちら:費用対効果を上げるSNS広告の運用術

 

8. 他SNS広告(Instagram)との使い分け

「Pinterest広告が良さそうなのは分かった。でも、うちはもうInstagram広告で手一杯だ」。これは、私がクライアントから本当によく聞く言葉です。PinterestとInstagramは、どちらもビジュアル中心のプラットフォームであるため、混同されがちです。しかし、前述の通り、その「使われ方(ユーザーマインド)」は全く異なります。したがって、広告も「使い分ける」のが正解です。

 

両プラットフォームを同じ「ビジュアル広告」として一括りにし、同じクリエイティブ(広告素材)を横流しするのは、プロのマーケターとしては三流の策と言わざるを得ません。それぞれの「文脈」に合わせた使い分けが必要です。

 

比較項目 Instagram広告 Pinterest広告
ユーザーマインド 受動的・交流・発見(暇つぶし)
「他人」のライフスタイルを見る。
能動的・検索・収集(計画)
「自分」の未来のライフスタイルを計画する。
時間軸 過去~現在 未来
広告の役割 衝動」と「憧れ」の喚起
(例:「あ、これ今すぐ欲しい!」)
計画」と「実行」の支援
(例:「あ、このアイデア(商品)、今度の〇〇に使おう」)
強いターゲティング デモグラフィック、興味・関心、リターゲティング キーワードターゲティング、興味・関心、リターゲティング
適した戦略 トレンドの創出、即時性の高いキャンペーン、ブランドの「世界観(憧れ)」の提示 検討初期層へのアプローチ、ハウツーコンテンツ、ECサイト(カタログ連携)への直接誘導

 

【使い分けの具体例(アパレルブランドの場合)】

  • Instagram広告では:
    人気インフルエンサーが「新作」を着こなす「憧れの」ビジュアルをリールで配信し、「」のトレンド感を演出し「衝動買い」を狙う。
  • Pinterest広告では:
    「結婚式 お呼ばれコーデ」「春服 オフィス」といった「キーワード」で検索しているユーザーに対し、TPOに合わせた「コーディネートのアイデア(ハウツー)」として、自社商品を(カタログ連携で)提示し、「未来の計画(保存)」と「購入(CV)」を狙う。

このように、同じ商品でも「見せ方」と「狙う層」が全く異なるのです。

 

 

9. Pinterest広告の費用と始め方

「専門的で、始めるのにお金がかかりそう…」と感じるかもしれませんが、その心配は無用です。Pinterest広告は、他の運用型広告(GoogleやInstagram)と全く同じ仕組みで、少額からスタートできます。

 

【費用(課金形態)】

広告費用はオークション形式で決まります。あらかじめ「1日1,000円まで」といった予算上限を設定できるため、使いすぎる心配はありません。

 

  • クリック課金(CPC – Cost Per Click):
    広告(ピン)がクリックされ、サイトに遷移した場合にのみ費用が発生。コンバージョン(購入)目的のキャンペーンで主に使われます。
  • インプレッション課金(CPM – Cost Per Mille):
    広告が1,000回表示されるごとに費用が発生。ブランド認知拡大目的のキャンペーンで使われます。
  • エンゲージメント課金(CPE – Cost Per Engagement):
    ユーザーが広告ピンを「保存(リピン)」したり、「クローズアップ(タップして拡大)」したりといった、エンゲージメント(操作)を行った場合に費用が発生。

最低出稿金額の縛りはないため、1日数百円からでもテスト配信が可能です。

 

【Pinterest広告の始め方(5ステップ)】

  1. ビジネスアカウントの作成(無料):
    まずは、Pinterestの「ビジネスアカウント」を取得します(個人アカウントからも無料で切り替え可能)。これにより、広告機能と分析(アナリティクス)機能が解放されます。
  2. 広告アカウントの設定:
    広告マネージャーにアクセスし、支払い情報(クレジットカードなど)を登録します。
  3. (推奨)ドメイン認証とカタログ連携:
    自社サイトのドメインを認証し、可能であればECサイトの「カタログ連携」を行います。(H2-6参照)
  4. キャンペーンの作成:
    広告マネージャーで「新しいキャンペーン」を作成します。ここで「目的」を選択します。
    ・認知度アップ: できるだけ多くの人に見せたい(CPM課金)
    ・比較検討: サイトへのトラフィックを増やしたい(CPC課金)・コンバージョン: 購入や申込を増やしたい(CPC課金)
  5. ターゲティングとクリエイティブの設定:
    「誰に」(キーワード、興味・関心、オーディエンス)、「何を」(広告として配信する既存のピン、または新しく作成したピン)、「いくらで」(予算、入札)を設定し、配信を開始します。

ハードルは驚くほど低いです。まずはビジネスアカウントを作成し、自社の商材に関連するキーワード(例:「キャンプ飯」「メンズ ギフト」)で、どんなピンが人気なのかをリサーチすることから始めてみてください。

 

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10. インテリア・美容・食品業界での成功事例

Pinterest広告のポテンシャルは、特にビジュアルと「未来の計画」が重要な業界で最大限に発揮されます。ここでは、代表的な3業界における(架空の)成功事例を、具体的な施策と共に紹介します。

 

【事例1】インテリア業界(D2C家具ブランド)

→課題: 検討期間が非常に長く、競合ブランドも多数。検討初期層との早期接点創出が難しい。

→施策:

  • カタログ連携」を実装し、全商品をショッピングピンとして展開。
  • キーワードターゲティング」を徹底。「1LDK レイアウト」「二人暮らし インテリア」「北欧風 リビング」など、ユーザーの「部屋の状況」や「テイスト」に関する検索キーワードに、関連する商品ピン(広告)を配信。

→結果: まさに「家」や「部屋」のことを能動的に考えているユーザーに、最適なタイミングで商品(アイデア)を提示。広告経由での「保存(リピン)」数が他SNSの5倍に。保存されたピンは、ユーザーが数ヶ月後に購入を検討する際の「比較リスト」として機能し、他SNS広告と比較してROAS(広告費用対効果)が180%改善した。

 

【事例2】美容・コスメ業界(中堅コスメブランド)

→課題: 新商品の認知を広げたいが、大手ブランドの広告予算には勝てない。商品の「使用感」を伝えたい。

→施策:

  • アイデアピン(動画)広告」を活用。新作アイシャドウを使った「イエベ春向け」「ブルベ冬向け」といった、パーソナルカラー別のメイクハウツー動画を制作。
  • 「イエベ メイク」「ブルベ コスメ」といったキーワードターゲティングと、「美容」カテゴリへの興味・関心ターゲティングを組み合わせて配信。

→結果: 単なる商品紹介ではなく、「自分に役立つメイク術」として広告が受け入れられ、アイデアピンの「保存率」が静止画広告の3倍を記録。コメント欄でも「この使い方が知りたかった!」とポジティブな反応が多発。ECサイトでの「指名検索」が急増し、発売初期の売上に大きく貢献した。

 

【事例3】食品業界(大手食品メーカー)

→課題: 定番商品(例:トマト缶)の、日常での使用頻度(購買頻度)を上げたい。

→施策:

  • 静止画ピン広告」で、自社トマト缶を使った「アレンジレシピ」を大量に制作。
  • 「時短 レシピ」「作り置き おかず」「簡単 パスタ」など、ユーザーの「献立の悩み」に関する膨大なキーワードに、解決策(レシピ)として広告を配信。

→結果: 広告が「レシピのアイデア」としてユーザーの「献立ボード」に大量に保存された。Pinterest上で「このレシピ試したい」と思わせることで、スーパーマーケットでの実購買(オフラインコンバージョン)を強力に後押し。広告接触者のブランド好意度が、非接触者と比べて大幅に向上した。

 


Pinterest広告は「未来の顧客」への種まきである

Pinterest広告について、その本質的な特性から、他SNSとの違い、具体的な活用法まで解説してきました。

 

この記事で最も伝えたかったことは、Pinterestが他のSNSと決定的に異なるのは、ユーザーが「未来の自分」のために「能動的に検索」しているプラットフォームである、という点です。このユニークなマインドセットが、広告を「邪魔者」から「探していたアイデア」へと昇華させます。

 

Instagram広告が「今」の衝動を刈り取る「狩猟型」の広告だとすれば、Pinterest広告は、ユーザーの「未来の計画」という畑に「アイデア」という種をまき、購買意欲が実るのを待つ「農耕型」の広告と言えるかもしれません。特に、検討の初期段階にある「未来の顧客」と、まだ競合も気づいていない最適なタイミングで出会えることは、広告主にとって最大の魅力です。このユニークなプラットフォームの可能性に、いち早く気づき、行動することが重要です。

 

読者の皆様が「明日から」実践できる、具体的な行動を2つ提案します。

 

  1. まずは、Pinterestで(可能ならビジネスアカウントを無料で作成し)、自社の業界や商材に関連する「キーワード」(例:「キャンプ飯」「オフィスカジュアル」)で検索し、現在どのような「ピン(アイデア)」が上位に表示され、どのような「広告」が出稿されているか、その「熱量」を肌で感じてみてください。
  2. もしあなたがECサイト運営者なら、自社が利用しているECカートシステム(例:Shopify, BASEなど)が、「Pinterestのカタログ連携」に対応しているかを、今すぐ確認してみてください。それが、あなたのビジネスの売上を劇的に変える「入り口」になるかもしれません。

未来の計画を立てる、購買意欲が最も高いユーザーが、あなたの「アイデア」を待っています。その「出会いの場」を活用しない手はないはずです。

 

併せて読みたい記事:業種別に見るSNS広告の成功パターン

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執筆者

株式会社カプセル 代表

デザイン歴30年以上。全国誌のデザインからキャリアをスタートし、これまでに1,000件以上の企業・サービスのブランディングを手掛けてきました。長年の経験に裏打ちされたデザイン力を強みに、感性と数字をバランスよく取り入れたマーケティング設計を得意としています。
また、自らも20年以上にわたり経営を続けてきた経験から、経営者の視点に立った実践的なマーケティング支援を行っています。成果に直結する戦略構築に定評があり、多くの企業から信頼を寄せられています。
香川県出身で、無類のうどん好き。地域への愛着と人間味あふれる視点を大切にしながら、企業の成長を支えるパートナーであり続けます。

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