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2025.12.27 最終更新日:2025.11.10

AI時代の「WEBコンサルティング」の未来|コンサルタントの役割はどう変わるか

「ChatGPTが、ここまで精度の高い分析レポートを数秒で…?」 私自身、SEOコンサルタントとしてGA4(Google Analytics 4)の複雑なデータを日々睨みつけてきた人間として、生成AIが提示した分析結果を見たとき、背筋が凍るような衝撃と、同時にある種の「確信」を抱きました。それは、Webコンサルティングという仕事の「ルール」が、根本から変わったという確信です。

 

もはや、AIの台頭は「未来の話」ではありません。「昨日までの常識」が通用しない「今、そこにある現実」です。「AIに仕事を奪われる」という漠然とした不安を抱えている同業者の方も多いのではないでしょうか。しかし、私はこの変化を「脅威」であると同時に、コンサルタントが本来の価値を発揮するための「最大の好機」だと捉えています。単純な分析やコンテンツ制作といった「作業(タスク)」がAIに代替されるからこそ、私たち人間にしかできない「真の価値」が浮き彫りになるのです。

 

これから、AIがWebマーケティングをどう変え、その中で私たちWebコンサルタントの役割がどう進化していくべきか、私の実体験と考察を交えて徹底的に解説していきます。

 

1. AI(ChatGPTなど)がWebマーケティングを変える

生成AI、特にChatGPTやGeminiに代表される大規模言語モデル(LLM)の登場は、Webマーケティングの現場を根底から揺さぶっています。これまで「専門家の領域」とされてきた多くの業務が、驚異的なスピードで自動化され始めているのです。

 

私がキャリアをスタートさせた頃のWebマーケティングは、まさに「人海戦術」でした。膨大なキーワードデータをExcelで処理し、競合サイトを目視で分析し、何時間もかけてレポートを作成する…。それが当たり前の日常でした。懐かしいですね。

 

しかし、AIの登場は、この「当たり前」を一変させました。具体的には、Webマーケティングの主要なプロセスである「分析」「制作」「実行」のすべてが、AIによって効率化・自動化の対象となったのです。

 

  • 分析フェーズ: GA4や広告の生データをAIに読み込ませるだけで、人間が見落としていた「インサイト(洞察)」や「異常検知」を瞬時にレポートアップできるようになりました。
  • 制作フェーズ: 「30代女性向けの美容液」といった指示だけで、SEO記事の構成案、ブログ本文、SNSの投稿文、広告のキャッチコピーまで、AIが数十秒で無数のパターンを生成します。
  • 実行フェーズ: 顧客セグメントごとに最適な広告クリエイティブをAIが自動でA/Bテストし、配信を最適化する。これは既に多くの広告プラットフォームで標準機能となりつつあります。

この変化は、Webマーケティングの「作業レベルのスキル」の価値を暴落させることを意味しています。私たちが直面しているのは、単なる「ツールの進化」ではなく、業務プロセスの「パラダイムシフト」なのです。

 

マーケティング・フェーズ AI導入前(従来の手法) AI導入後(現在・未来)
① 分析 (Analysis) 人間がGAやExcelを駆使し、数日かけてデータを集計・分析。経験と勘に基づく洞察。 AIが数秒で膨大な生データを処理。統計的な異常検知や、人間が見落とす相関関係を発見。
② 制作 (Creation) ライターやデザイナーが、経験に基づき1パターンずつ手作業でコンテンツや広告を制作。 AIがペルソナに基づき、数百パターンの記事構成案や広告クリエイティブを即座に自動生成。
③ 実行 (Action) 担当者が手動で広告の入札単価を調整。A/Bテストも限定的。 AIがリアルタイムで入札を自動最適化。数千パターンのクリエイティブを同時にA/Bテストし、学習・改善。

 

こちらも読まれています:WEBコンサルティングで得られる成果とは

 

2. AIによる「分析」の自動化

Webコンサルタントの「三種の神器」の一つが、データ分析スキルでした。GA4の複雑なインターフェースを使いこなし、膨大なデータから「CVRが下がった原因は、特定の流入チャネルにある」といった仮説を導き出す。この「分析」こそが、コンサルの付加価値の源泉だったのです。

 

しかし、AIはこの領域を凄まじい勢いで侵食しています。

 

私自身、あるクライアントの月次レポート作成で、GA4からエクスポートした数万行の生データをAI(ChatGPTのAdvanced Data Analysis)に読み込ませた時のことを鮮明に覚えています。「主要KPIの変動要因を分析し、異常値があれば特定して」と指示しただけで、AIはわずか1分足らずで、私自身が数時間かけて行うであろう分析結果を提示しました。

 

面白いことに、特定の参照元(特定のブログ)からの流入は、コンバージョン率が平均の3.5倍高いにもかかわらず、流入数が前月比で30%減少しています。これが全体のCVR低下の主要因である可能性が高いです

 

…的確すぎる。このレベルの「事実ベースの分析」は、もはやAIの独壇場です。

AIが得意とする分析業務は、以下のように多岐にわたります。

 

  • レポーティングの自動化: 定型的な月次レポート(KPIの増減、チャネル別パフォーマンス)の作成。
  • 異常検知: 「突然、特定のページの離脱率が急上昇した」といった異常値をリアルタイムでアラート。
  • 相関分析: 「広告のクリック率と、その日の天気や曜日との相関」など、人間では気づきにくいパターンの発見。
  • セグメンテーション: 顧客データを自動でクラスタリングし、「ロイヤル顧客予備軍」や「離脱予備軍」といったセグメントを抽出。
  • 競合分析: 競合他社のWebサイトやSNSの動向をAIがクローリングし、コンテンツ戦略やキーワード戦略の変動をレポート。

こうした「データの集計・整理・可視化・異常検知」といった作業は、今後急速にAIへと移管されていくでしょう。コンサルタントが「GA4の操作方法に詳しい」とか「Excelのピボットテーブルが速い」といったスキルは、もはや何の差別化要因にもならなくなるのです。

 

 

3. AIによる「コンテンツ・広告」の自動生成

分析と並ぶもう一つの大きな変化が、「制作(クリエイティブ)」の自動化です。SEOコンサルタントとして、私は「コンテンツこそが王様」と信じてきましたが、その「王様」を生み出すプロセスがAIによって激変しています。

 

ほんの1、2年前まで、AIが書く文章は「てにをは」が不自然で、読めたものではありませんでした。しかし、今の生成AIは、驚くほど自然で、論理的な文章を生成します。「SEOに強いブログ記事の構成案を作って」「この商品のメリットを3パターン、広告キャッチコピーにして」といった指示(プロンプト)は、もはや日常的な業務風景です。

 

ただし、ここで冷静に見極めなければならないのは、AIが「得意なこと」と「不得意なこと」です。

 

  AIが「得意」なコンテンツ AIが「不得意」なコンテンツ
特徴 「0→1」の叩き台(構成案、アイデア出し)
「1→100」の量産(リライト、多パターン生成)
・事実ベースの要約、説明文、Q&A
「0→1」の真の独創性(世にない新しい切り口)
一次情報(独自の経験談、取材、事例)
・強い感情、共感、ブランドの「哲学」
具体例 ・SEO記事の構成案作成
・広告キャッチコピーのA/Bテスト案 100本
・商品説明文の多言語翻訳
・既存記事の要約
・クライアントへの独自のインタビュー記事
失敗談から得た、生々しい教訓
業界の未来を予測する、強いオピニオン記事

 

面白いことに、Google自身も「AIによって自動生成されたコンテンツ」に対するポリシーを更新しています。かつては「自動生成=スパム」と見なされていましたが、現在は「コンテンツの『質』が問題であり、生成方法(AIか人間か)は問わない」というスタンスに変わりました 。

 

これは、「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」、特に「Experience(経験)」をAIでどう担保するのか? という新しい問いを私たちに突きつけています 。AIは「経験」できません。AIはインターネット上の情報を学習することはできても、あなたのクライアントのオフィスを訪れ、担当者の「熱意」を感じ、商品の「使い心地」を試すことはできないのです 。

 

「誰でも書ける一般的な情報(=AIが得意なこと)」の価値は暴落し、「あなたにしか書けない一次情報(=AIが不得意なこと)」の価値が相対的に爆上がりする。これが、AI時代のコンテンツ制作の本質だと私は考えています。

 

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4. 「AIに奪われる」コンサルタントの仕事

ここまで「分析」と「制作」の自動化を見てくると、「AIに奪われるコンサルタントの仕事」は自ずと見えてきます。それは、一言で言えば「オペレーター(作業者)」としての仕事です。

 

もし、あなたの提供価値が以下のリストに当てはまるなら…正直、かなり危険な状況にあると言わざるを得ません。

 

  • レポート作成代行: GA4のデータをExcelにコピペし、グラフを作成して「報告」するだけの仕事。
  • 設定代行: 広告アカウントやタグの「設定作業」そのものを価値としている仕事。
  • 記事量産代行: 競合サイトのリライト(書き直し)や、薄い情報の量産だけを行う仕事。
  • キーワードリスト作成: ツール(例:キーワードプランナー)から抽出したデータを、そのまま納品するだけの仕事。

これらの業務は、本質的に「指示されたことを、正確に、速く処理する」能力を問うものです。そして、この領域において、人間はAIに絶対に勝てません。AIは24時間365日文句も言わず、人間の数千倍のスピードで「作業」を実行できるからです。

 

私が若手の頃は、「GA4のこの指標を、こう分析する」という「操作方法」や「分析手法」を知っていること自体が価値でした。しかし、AIがその手法を瞬時に実行・学習する今、コンサルタントが「作業代行屋」として生き残る道は、ほぼ閉ざされたと言っていいでしょう。クライアントは、月額数十万円を「作業」のために払い続けるでしょうか? AIという「月額数千円の超優秀なオペレーター」がいるにもかかわらず。

 

AIに奪われる(価値が暴落する)仕事 AI時代に価値が上がる仕事
「作業(How)」の実行
・定型レポートの作成
・広告の入稿、設定作業
・データの集計、転記
・競合コンテンツのリライト
「問い(Why/What)」の設定
・「どのデータを分析すべきか」の定義
・「どんな広告を試すべきか」の仮説立案
・「AIの分析結果」の解釈と意思決定
・「AIには書けない一次情報」の取材・提供
「手法」を知っていること
(例:ツールの操作方法)
「本質」を理解していること
(例:クライアントのビジネスモデル、市場の力学)
オペレーター / 作業者 ストラテジスト / 意思決定者 / 教育者

 

付随記事:WEBコンサルティングで解決できる主な課題

 

5. AI時代に「価値が上がる」Webコンサルのスキル

では、オペレーターとしての仕事がAIに奪われる未来で、私たちWebコンサルタントの「価値」はどこに宿るのでしょうか?

 

私は、その価値は「AIにはできない、人間にしかできない領域」にこそあると確信しています。AIが「優秀な計算機」「高速なオペレーター」であるならば、コンサルタントは「進むべき方向を示し、クライアントの意思決定を支えるサポーター」になるべきです。

 

AIがどれだけ進化しても、決して代替できない(あるいは、価値が爆発的に上がる)スキル。それは、大きく分けて以下の3つだと考えています。

 

  1. 「戦略」を構想するスキル (Strategic Thinking)
    AIは「CVRを最大化せよ」と命令されれば最適な解を出すかもしれません。しかし、「そもそも、このビジネスにとっての『ゴール(KGI)』は何か?」「売上か、認知か、LTV(顧客生涯価値)か?」という、ビジネスの根幹にある「問い」そのものを立てることはできません。クライアントのビジネスモデル、市場での立ち位置、競合の動向、そして「社長の想い」といった、数値化できない複雑な要素を統合し、「今、Webで何を達成すべきか」という戦略(ブループリント)を描く能力 。これが、コンサルタントの最重要スキルになります。
  2. 「人間」を理解するスキル (Human Understanding)
    AIは「データ(過去)」を分析するのは得意ですが、「顧客(人間)の『心(未来)』」を理解するのは苦手です。なぜ顧客がその商品を選ぶのか、というインサイト。クライアント企業の「社内政治」や「担当者の悩み」に寄り添い、合意形成をリードするファシリテーション能力。AIが生成した「正論(データ)」を、現場の人間が「納得」し「実行」できる「物語(ナラティブ)」に翻訳するコミュニケーション能力。これら、泥臭くも本質的な「人間力」の価値は、AI時代にこそ際立ちます。
  3. 「AI」を使いこなすスキル (AI Literacy)
    AIを「脅威」として恐れるのでも、「魔法の杖」として盲信するでもなく、「優秀だが、クセのある助手」として使いこなすリテラシーです。AIに「何を(What)」聞くべきか(=プロンプトエンジニアリング)、AIが出してきた答え(アウトプット)の「真偽(ファクトチェック)」をどう見抜くか、そしてAIの「限界」を理解した上で、人間の「価値」をどこで上乗せするか 。AIを「操る側」に回れるかどうかが、決定的な差を生みます。

 

スキル分類 AI時代に価値が「下がる」スキル AI時代に価値が「上がる」スキル
テクニカルスキル ・ツールの「操作」能力(GAの画面操作、Excelの関数)
・「集計」作業の速さ、正確さ
「問い」を立てる能力(AIへの適切な指示)
・AIのアウトプットを「評価・編集」する能力
ヒューマンスキル ・(特に価値が下がるものはない) 戦略立案・構想力(ビジネスのKGI設計)
コミュニケーション能力(合意形成、翻訳)
課題発見・定義能力(根本原因の特定)
コンセプチュアルスキル ・既存の「手法」を暗記していること ビジネスモデルへの深い理解
市場と顧客の「インサイト」洞察
「一次情報」の獲得力と編集力

 

 

6. 「戦略立案」と「意思決定」

AI時代に価値が上がるスキル、その筆頭が「戦略立案」と「意思決定」の支援です。

 

AIは「答え(データ分析結果)」を出すのは得意ですが、「どの『問い』に答えるべきか」を決定するのは苦手です。そして、その「答え」をどう解釈し、次の「行動」に結びつけるか、という「意思決定」は、AIには(まだ)できません。そこには「責任」と「文脈」の理解が伴うからです。

 

私のクライアントで、こんなことがありました。ECサイトの売上を分析したAIは、「客単価は高いが、CVRが低い『高所得者向けセグメント』への広告予算を削減し、CVRが高い『中所得者向けセグメント』に予算を集中投下すべき」と提案しました。データ上は、短期的なCPA(顧客獲得単価)を改善する上で、極めて「正論」です。

 

しかし、私はその提案に「待った」をかけました。なぜなら、そのクライアントのビジネスの根幹は、「将来のロイヤルカスタマーとなり得る『高所得者層』との、長期的な関係構築」にあったからです。

 

ここが、コンサルタントの「腕の見せ所」です。

 

  • AIの「正論」を翻訳する:
    「AIは『短期CPA』を最適化しようとしていますが、社長の『長期的なブランド構築』というビジョンとはズレが生じます」と、「AIの思考」と「クライアントの目標」のギャップを言語化します。
  • 「文脈」を加えて、戦略を再定義する:
    「AIの分析(CVRが低いという事実)は正しい。しかし、我々の戦略(長期ブランディング)に基づけば、このセグメントへのアプローチは『刈り取り(CV)』ではなく『育成(ナーチャリング)』と『体験価値の向上』に変えるべきです」と、AIの分析結果を「活用」しつつ、戦略を修正します。
  • 「意思決定」の選択肢を提示する:
    「A案: AIの提案通り短期CPAを追求する」「B案: 高所得者層向けのコンテンツと予算を(あえて)強化し、LTV(顧客生涯価値)を追う」という形で、メリット・デメリットを整理し、最終的な「意思決定」をクライアントに促します。

 

AIが「優秀なデータアナリスト」だとすれば、コンサルタントは「戦略的な意思決定を支援する『参謀(CFOやCSO)』」としての役割を担うことになります。AIが出した「点(データ)」を、クライアントのビジネスという「線(戦略)」と「面(ビジョン)」に結びつける。この「統合と要約」、そして「独自の分析と考察」こそが、AIには真似できない「戦略立案」の価値なのです。

 

参考ページ:WEBコンサルティングと他サービスとの違い

 

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7. 「複雑な課題」の解決

AIが分析できるのは、基本的に「データ化(定量化)された過去」です。しかし、Webコンサルティングの現場で直面する課題の多くは、データだけでは割り切れない、泥臭く「複雑な課題」です。例えば、「Webからの売上が伸び悩んでいる」という一つの「結果」があったとします。

 

AIは、GA4のデータを分析して「特定のキーワードでの順位が下落している」「LP(ランディングページ)の離脱率が高い」といった「Web上の『症状』」を特定することは得意です。しかし、それが「なぜ」起きたのか、という「根本原因(Root Cause)」を突き止めるのは、AIの守備範囲外であることが多いのです。

 

私が経験したケースでは、あるBtoB企業の売上低迷の「根本原因」は、Web上にはありませんでした。それは、「営業部門とマーケティング部門の『連携不全』」でした。

 

マーケ部門は「Webでリード(見込み客)は獲得している(KPI達成)」と主張し、営業部門は「Webから来るリードは質が低く、全く商談にならない」と不満を抱く。WebコンサルタントとしてAIの分析結果だけを見て「LPのCVRを改善しましょう」と提案するのは、対処療法に過ぎません。

 

このような「複雑な課題」を解決するために、AI時代のコンサルタントに求められるのは、以下のような「オフライン」のスキルです。

 

  1. ファシリテーション(合意形成):
    営業部長とマーケ部長を同じテーブルに着かせ、お互いの「KPI」と「リードの定義」をすり合わせるための、「会議」を設計し、進行する能力。
  2. ヒアリングと課題定義:
    営業担当者に「同行」し、顧客から「どんな言葉で断られているか」という、データには現れない「一次情報(生の声)」を収集する能力。そして、「真の課題は、WebのCVRではなく、商談化率の低さ(=リードの質のミスマッチ)である」と「課題を再定義」する能力。
  3. 組織を動かす「実行支援」:
    「Webのフォーム項目に『営業が知りたい情報』を追加する」「獲得したリードの『温度感(スコア)』を定義し、即座にSFA/CRM(営業支援システム)に連携する」といった、部門間を横断する「業務フローの再構築」まで踏み込んで支援する実行力。

AIは「組織の壁」を越えられません。AIは「部門間の対立」を仲裁できません。データ(定量)と人間(定性)を統合し、組織という「複雑系」を動かすことこそが、人間にしか解けない「複雑な課題」であり、コンサルタントの存在価値なのです。

 

関連文献:WEBコンサルティングで成果を出す企業の共通点

 

8. AIを「使いこなす」WEBコンサルティング

「AIに奪われる」と怯えるのではなく、「AIを『どう』使いこなすか」を考える。これが、AI時代のコンサルタントの正しいスタンスです。

 

AIは、私たちから「作業」を奪う代わりに、「時間」という最も貴重なリソースを与えてくれます。レポート作成やデータ集計にかけていた時間をゼロにできれば、その空いた時間で、私たちコンサルタントは「より価値の高い仕事(=戦略立案や課題解決)」に集中できます。AIは「敵」ではなく、「最強のアシスタント」であり「壁打ち相手」です。

 

私が現在、クライアントワークで実践している「AIの具体的な活用シーン」を紹介します。これは、AIを「使いこなす」コンサルティングの一例です。

 

コンサルティング・フェーズ AIに「任せる」こと(アシスタント) コンサルタントが「集中」すること(付加価値)
① 現状分析 ・GA4データの集計、グラフ化
・SEO競合上位10サイトの「共通の見出し構成」の抽出
・ヒートマップデータのパターン分類
・AIの分析結果を「解釈」し、「なぜ」そうなっているのかの「仮説」を立てる。
・クライアントへのヒアリング。
② 戦略立案 ・ペルソナ案の叩き台作成
・キーワードのグルーピング作業
・施策アイデアの「壁打ち相手」(例:「他に施策はない?」)
・AIが出したアイデアを「取捨選択」し、クライアントの「KGI・リソース」に合わせた実行可能な「戦略(優先順位)」に落とし込む。
③ コンテンツ制作 ・記事構成案(叩き台)の作成
・広告コピーの多パターン生成
・冗長な文章のリライト
・AIの構成案に、「独自の一次情報(経験、事例)」を注入する 。
・ブランドの「トーン&マナー」に合わせた最終的な「編集・監修」。
④ レポーティング ・月次データの自動集計
・主要KPIの変動要因の「事実」抽出
・「事実」に対する「考察」と「ネクストアクション(次月の提案)」の作成。
・クライアントへの「報告」と「議論」(意思決定の支援)。

 

AIを「使いこなす」とは、AIのアウトプットを「鵜呑み」にせず、それを「素材」として、コンサルタントの「経験」と「知見(一次情報)」で「編集」し直すことです。AIが「ファクト(事実)」を提供するなら、コンサルタントは「オピニオン(意見)」と「インサイト(洞察)」を提供する。この棲み分けが、AI時代のコンサルティングのスタンダードになります。

 

 

9. WebコンサルとAIの協業

前項の「使いこなし」をさらに一歩進めると、「AIとの協業(コラボレーション)」という姿が見えてきます。

これは、AIを単なる「ツール(道具)」として使うのではなく、プロジェクトチームの一員、すなわち「思考を拡張するパートナー」として扱う、ということです。

 

この協業モデルにおいて、Webコンサルタントの役割は「AIの調教師」または「AIの指揮者」と呼ぶべきものに変わります。例えば、あるクライアントの「新しいWebサイトのコンセプト」を立案するプロジェクトがあったとします。

 

【従来の進め方(人間のみ)】

コンサルタントとディレクターが数日間の会議室にこもり、ホワイトボードを前にウンウン唸りながら、自らの「経験」と「過去の事例」を頼りに、数パターンのコンセプト案をひねり出す。

 

【AIとの協業モデル(人間 + AI)】

  1. コンサルタント(人間): 「問い」を立てる。
    「クライアントのビジョン」「競合A, B, Cの戦略」「ターゲット層の最新トレンド」をAIにインプット(学習)させる。そして、「我々のユニークな価値(USP)を最大化するWebサイトのコンセプト案を、ペルソナ別に10個提案せよ」と指示する。
  2. AI: 「発散」と「量産」を担当。
    人間では思いつかないような、突拍子もない(かもしれない)切り口を含む10個のコンセプト案を、数秒で提示する。
  3. コンサルタント(人間): 「評価」と「編集」を行う。
    「10個の案は面白いが、どれも『ブランドの哲学』が欠けている」とAIにフィードバックする。AIの案(A)と(B)を「統合」し 、そこにコンサルタント自身の「独自の解釈(一次情報)」 を加え、全く新しい「C案」を創り出す。
  4. AI: 「具体化」と「検証」を担当。
    「そのC案に基づき、トップページのワイヤーフレームと、キャッチコピー5案を生成せよ」と指示。生成されたもので、簡易なユーザーテストを行う。
  5. コンサルタント(人間): 「最終決定」と「実行」を担う。
    テスト結果とクライアントの「想い」を天秤にかけ、最終的なコンセプトを「意思決定」し、制作チームに「なぜ」それを選んだのかを「物語」として説明する。

この協業モデルでは、AIが「思考の幅(発散)」と「実行の速さ(具体化)」を担保し、人間が「思考の深さ(解釈)」と「最終的な意思決定(責任)」を担います。AIに「作業」を任せることで、人間は「考える」という最も重要な仕事に、より多くの時間を使えるようになるのです。

 

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10. これからの時代に選ばれるコンサルタント像

AIの進化によって、Webコンサルティングの現場は、間違いなく「作業」から「思考」へと、その重心を移していきます。「オペレーター」としてのコンサルタントは淘汰され、AIを使いこなす「戦略家」としてのコンサルタントが選ばれる時代になります。

 

この変化は、単に「スキルセット」が変わるという話に留まりません。クライアントとの「関係性」そのものが変わることを意味します。

 

  淘汰されるコンサルタント(オペレーター) 選ばれるコンサルタント(ストラテジスト)
役割 作業代行者、ツールの操作屋 戦略パートナー、事業の「参謀」、AI調教師
提供価値 労働力、作業スピード、手法の知識 「問い」の設定、戦略立案、意思決定の支援、一次情報
クライアントとの関係 「発注者」と「下請け」(指示待ち) 「クライアント」と「パートナー」(伴走・提案型)
AIとの関係 「競合」(仕事を奪われる) アシスタント / パートナー」(使いこなす)

 

AIがどれだけ優秀な分析結果を出しても、クライアントが「で、結局うちは何をすればいいの?」と迷う限り、私たちの仕事はなくなりません。AIの「正論(データ)」と、クライアントの「現実(リソースや想い、組織の壁)」をすり合わせ、「これなら実行できる」という「最適解(ネクストアクション)」を導き出し、その実行まで伴走すること。それこそが、AIには決して真似できない、血の通ったコンサルティングの価値です。

 


AI時代のコンサルタント像は「戦略家」であり「教育者」である

この記事で最も伝えたかったことは、AIは私たちWebコンサルタントの「仕事を奪う存在」ではなく、「仕事の『質』を変える存在」だということです。AIによって「オペレーター(作業者)」としてのコンサルタントは淘汰されますが、AIを使いこなす「ストラテジスト(戦略家)」そして、クライアントとAIを繋ぐ「コミュニケーター(翻訳者・教育者)」としてのコンサルタントの需要は、爆発的に高まります。

 

これからの時代に選ばれるコンサルタントになるために、「明日から」実践できる、具体的な行動を2つ提示します。

 

  1. まずは、あなたがクライアントに提出している「月次レポート」の「考察」欄を見直してください。そこに「GA4の数字の読み上げ」しか書いていないのであれば、次回から「なぜ、その数字になったのか(仮説)」と「だから、来月何をすべきか(提案)」という、「あなたにしか書けないオピニオン」を必ず追記することが重要です。
  2. 次に、今あなたが抱えている「最も単純な作業(例:キーワードリストの整理、定型文の作成)」を、一度AI(ChatGPTなど)に任せてみてください。そして、AIのアウトプットを「素材」として、あなたが「編集・加筆」することで、どれだけ時間が短縮され、どれだけアウトプットの質が上がるか(あるいは下がるか)を、その身で「体験」してみてください。

AIを恐れる必要はありません。AIを「最強のアシスタント」として使いこなし、私たち人間は、人間にしかできない「戦略」と「意思決定」、そして「クライアントの心に寄り添うこと」に全力を注ぎましょう。それこそが、AI時代のWebコンサルティングの未来です。

 

次に読む:失敗しないWEBコンサルティングの選び方

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執筆者

株式会社カプセル 代表

デザイン歴30年以上。全国誌のデザインからキャリアをスタートし、これまでに1,000件以上の企業・サービスのブランディングを手掛けてきました。長年の経験に裏打ちされたデザイン力を強みに、感性と数字をバランスよく取り入れたマーケティング設計を得意としています。
また、自らも20年以上にわたり経営を続けてきた経験から、経営者の視点に立った実践的なマーケティング支援を行っています。成果に直結する戦略構築に定評があり、多くの企業から信頼を寄せられています。
香川県出身で、無類のうどん好き。地域への愛着と人間味あふれる視点を大切にしながら、企業の成長を支えるパートナーであり続けます。

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