「渾身の投稿なのに、いいねもコメントもサッパリ…」「毎日投稿を頑張っているのに、フォロワーが全く増えない…」
SNSマーケティングの現場は、まるで流れの速い川のようです。昨日まで通用していた必勝パターンが、今日にはもう時代遅れになっている。そんな目まぐるしい変化の中で、多くの担当者が先の見えない不安と戦っているのではないでしょうか。
私自身、Webマーケターとしてキャリアをスタートさせた当初は、まさに手探りの連続でした。時間をかけて作り込んだコンテンツが誰にも響かず、エンゲージメントの低さに頭を抱える日々。一方で、競合の何気ない投稿がなぜか「バズって」いる。この差は一体何なのだろうと、何度もアナリティクスとにらめっこしたものです。
この厳しい世界で生き残るために欠かせないのが、表面的な流行を追うだけではない、トレンドの「本質」を読み解く力です。なぜそのトレンドが生まれたのか?その裏側にあるユーザー心理は何か?そして、それを自社の戦略にどう落とし込むのか?この思考プロセスこそが、数多のアカウントの中から突き抜けるための唯一の羅主盤となります。これから、私が数々の失敗と成功から学んだ、SNSのトレンドを的確に捉え、具体的な成果に繋げるための実践的な方法を、具体的な事例を交えながら解説していきます。
目次
もはや誰もが感じていることですが、現在のSNSの中心は間違いなく「ショート動画」にあります。Instagramのリール、TikTok、YouTubeショート。これらのプラットフォームが、ユーザーの可処分時間を凄まじい勢いで奪い合っています。
このトレンドの背景にあるのは、単に「短い動画が流行っている」という単純な話ではありません。情報過多の時代を生きる私たちが、無意識に求める「タイパ(タイムパフォーマンス)」という価値観が大きく影響しています。ユーザーは、一つのコンテンツに多くの時間をかけることを嫌い、最短時間で面白い情報、役立つ情報にたどり着きたいのです。
私が以前担当したコスメブランドのアカウントで、手痛い失敗をしたことがあります。新商品の魅力を余すところなく伝えようと、プロのカメラマンを雇い、丁寧に編集した1分半の紹介動画をリールに投稿しました。しかし、結果は惨敗。視聴維持率は悲惨なもので、ほとんどのユーザーが冒頭の3秒で離脱していました。
分析を重ねて気づいたのは、「作り手が見せたいもの」と「ユーザーが見たいもの」の絶望的な乖離です。そこで戦略を180度転換。同じ商品を使い、今度はプロの機材を一切使わず、スマホだけで撮影した「3つの使い方を15秒で見せる」という、テンポの速い動画を投稿してみました。するとどうでしょう。以前の動画の数十倍の再生数を記録し、コメント欄には「これなら私にもできそう!」という共感の声が溢れたのです。
この経験から学んだ、ショート動画時代の戦略変化のポイントは3つです。
ショート動画は単なるフォーマットの変化ではありません。ユーザーとのコミュニケーションのあり方そのものを変える、大きな地殻変動なのです。
SNS担当者にとって、悪夢のような言葉が「アルゴリズムの変更」です。昨日まで安定してリーチを獲得できていた投稿が、今日になったら全く見られなくなる。そんな理不尽とも思える現実に、心を折られそうになった経験は誰にでもあるはずです。
しかし、ここで思考停止してはいけません。「アルゴリズムはブラックボックスだから仕方ない」と諦めるのは、あまりにもったいない。アルゴリズムは、決して気まぐれに動いているわけではないのです。その変更の裏には、プラットフォーム側が目指す「理想のユーザー体験」という、明確な思想が存在します。
彼らのビジネスモデルを考えれば、これらの目的は当然です。つまり、アルゴリズムをハックしようとするのではなく、「プラットフォームの目指す方向に、自分たちのコンテンツをどう寄り添わせていくか」という視点を持つことが、最も確実な攻略法なのです。
数年前、私が運用していたメディアアカウントで、Instagramのエンゲージメントが急落した時期がありました。それまでは、綺麗な風景写真に長文の解説を添える、というスタイルで一定のファンを獲得していました。しかし、アルゴリズムがリール動画を優遇し始めたことで、静止画投稿のリーチが目に見えて減少していったのです。
社内からは「今まで通り、質の高い写真と文章で勝負すべきだ」という声も上がりました。しかし、私はプラットフォームの変化に対応しないことは、緩やかな死を意味すると感じていました。そこでチームを説得し、リソースの半分をリール動画の制作に振り分ける決断をします。
具体的に取った施策は、以下の通りです。
この方針転換の結果、数ヶ月後にはアカウントのリーチは以前の数倍にまで回復・成長しました。アルゴリズムの変更は、危機であると同時に、これまでのやり方を見直す絶好の機会でもあります。変化の兆候をいち早く察知し、その意図を読み解き、しなやかに戦略を変えていく。その柔軟性こそが、SNSマーケティングの荒波を乗りこなすための鍵となるのです。
テキスト、画像、動画に続く第4のコンテンツとして、今、急速に存在感を増しているのが「音声」と「ライブ」です。X(旧Twitter)のスペースや、Instagramのライブ配信機能は、もはや単なるおまけではありません。ファンとの間に、これまで以上に深く、そして熱量の高い関係性を築くための、極めて強力なツールとなっています。
これらのコンテンツがなぜ重要なのか。その理由は大きく二つあります。
一つは、「ながら需要」に応えられる点です。現代人は常に時間に追われています。通勤中、家事をしながら、運動をしながら。そんな風に、視覚は別のことに使いながらも、耳は空いているというシーンは意外と多いものです。音声コンテンツは、そうしたユーザーの「スキマ時間」に入り込み、ブランドのメッセージを届けることができます。
もう一つの、そしてより本質的な理由が、「リアルタイムの双方向性」がもたらす圧倒的なエンゲージメントの高さです。作り込まれた動画コンテンツは、どこか企業とユーザーの間に見えない壁を作りがちです。しかし、ライブ配信には、その瞬間にしか生まれない「生々しさ」があります。少し段取りを間違えたり、噛んでしまったりする偶発性(ハプニング)すらも、人間的な魅力として伝わり、視聴者との心理的な距離をぐっと縮める効果があるのです。
私が以前、あるBtoBのIT企業のSNS運用を担当していた時のことです。その企業は非常に堅いイメージを持たれており、SNSでも製品の機能紹介ばかりを投稿していました。エンゲージメントは低く、フォロワーも業界関係者ばかり。
この状況を打破するために提案したのが、「開発者によるゲリラインスタライブ」でした。事前にほとんど告知せず、「今から30分だけ、開発者が皆さんの質問に何でも答えます!」とだけ発信してスタート。最初はコメントもまばらでしたが、一人のフォロワーが投げかけた専門的な質問に、開発者が熱っぽく、そして楽しそうに答えた瞬間から、空気は一変しました。
次々と寄せられるコメントを一つひとつ丁寧に拾い、対話を重ねていくうちに、コメント欄はまるでオンラインの座談会のような熱気を帯びていきました。
このライブ配信がもたらしたものは、短期的な再生数やいいね!の数ではありません。参加してくれたユーザーの中に生まれた、「この会社は、私たちの声に耳を傾けてくれる」「製品の裏には、こんなに情熱を持った人たちがいるんだ」という、強い信頼感とロイヤリティでした。
ライブ配信を成功させるコツは、「完璧な台本」を用意することではありません。むしろ、ユーザーからのコメントという「最高の台本」に、いかに真摯に、そして柔軟に対応できるか。そのアドリブ力こそが問われます。企業の「きれいな顔」だけでなく、「素顔」を見せる勇気が、これからの時代、ファンの心を掴む上で不可欠になってくるでしょう。
SNSを眺めていると、彗星のごとく現れては消えていく「ミーム」や「流行語」があります。特定のフレーズ、画像フォーマット、ダンスなど、その形は様々ですが、多くのユーザーがそれを模倣し、アレンジを加えて再生産していくことで、爆発的な広がりを見せます。
これらのトレンドにうまく乗ることができれば、最小限の労力で大きな認知を獲得できる可能性があります。しかし、はっきり言って、これは諸刃の剣です。一歩間違えれば、「若者ぶっているイタい企業アカウント」というレッテルを貼られたり、最悪の場合、文脈を理解しない不適切な使用で「炎上」したりするリスクも孕んでいます。
では、企業アカウントはミームとどう付き合っていけば良いのでしょうか。成功と失敗を分けるポイントは、たった二つです。
私が過去に目撃した失敗例に、ある地方の企業が、若者の間で流行していた少しネガティブなニュアンスを含む言葉を、ポジティブな意味だと勘違いしてキャンペーン名に使ってしまい、SNS上で「意味わかってる?」と総ツッコミを受けていたケースがあります。担当者に悪気はなかったのでしょうが、リサーチ不足が招いた悲劇でした。
逆に、成功した事例として記憶に残っているのは、ある菓子メーカーの事例です。SNSであるキャラクターの画像を使った大喜利のようなミームが流行した際、そのメーカーは自社製品をそのキャラクターに持たせただけの、非常にシンプルな画像を一枚投稿しました。しかし、それが「公式が乗っかってきたw」「仕事が早い」と大きな話題を呼び、結果的に製品の認知度を飛躍的に高めることに成功したのです。
この成功の裏には、
ミームの活用は、ハイリスク・ハイリターンな施策です。手を出す前には、一度立ち止まって「これは本当に自分たちがやるべきことか?」と自問自答する冷静さが、担当者には求められます。
マーケティングの世界で、常に注目を集める「Z世代」。彼らの心を掴むことは、多くの企業にとって喫緊の課題です。しかし、「Z世代」と一括りにして、ステレオタイプなイメージでコンテンツを作ってしまうことほど、危険なことはありません。
彼らは、生まれた時からインターネットが当たり前に存在する「デジタルネイティブ」であり、上の世代とは全く異なる価値観や情報収集の方法を持っています。私がZ世代のインターン生たちと話していて、いつも衝撃を受けるのは、彼らの情報に対する審美眼の鋭さです。
彼らは、企業が発信する「広告」や「きれいごと」を瞬時に見抜きます。そして、そうした宣伝色の強いコンテンツを、徹底的に避ける傾向にあります。彼らが求めるのは、企業からの「売り込み」ではなく、信頼できる誰かからの「リアルな情報」なのです。
Z世代に響くコンテンツを考える上で、欠かせないキーワードがいくつかあります。
以前、若者向けのアパレルブランドで、Z世代のチームと一緒にTikTokアカウントを立ち上げた経験があります。当初、私たちマーケティング部の人間が考えていたのは、「プロのモデルを起用し、オシャレな動画を作る」という、いかにもな企画でした。
しかし、Z世代のメンバーから出てきたのは、「社員がモデルになって、一週間の着回しコーデを紹介する」「NGコーデとOKコーデを比較する」といった、よりリアルで、視聴者の悩みに寄り添う企画でした。正直、最初は「そんな素人っぽい動画で大丈夫か?」と不安でした。
結果は、私たちの予想を遥かに超えるものでした。特に、少し体型にコンプレックスのある男性社員が、体型カバーできる着こなしを紹介した動画は、爆発的に再生され、「こういうのが見たかった!」「勇気をもらえました」というコメントで溢れかえったのです。
この経験を通じて、Z世代にアプローチする上で最も重要なのは、「企業としての仮面」を脱ぎ捨て、一人の人間として、正直に、そして誠実にコミュニケーションを取ろうとする姿勢なのだと痛感しました。加工しすぎない、宣伝しすぎない。その「引き算の美学」こそが、彼らの信頼を勝ち取るための第一歩なのです。
「フォローする価値のあるアカウント」と判断されるために、今、企業アカウントに求められているのが「パーソナライズ化」、つまり「中の人」の顔が見える運用です。画一的なプレスリリースや、当たり障りのない情報を発信するだけの「公式アカウント」は、もはや誰の心にも響きません。ユーザーは、そのアカウントならではの「個性」や「専門性」を求めているのです。
この「中の人」戦略は、BtoCとBtoBで、その目指すべき方向性が少し異なります。
私がコンサルティングで関わった、ある産業用機械メーカーの事例が非常に印象的でした。その企業のXアカウントは、もともと展示会の告知やニュースリリースを転載するだけで、フォロワーは社員と取引先がほとんど、という状態でした。
そこで、アカウントの運用を、社内で最も製品知識が豊富なベテラン技術者の一人に任せてみることにしました。彼には、「会社の公式見解ではなく、あなたの個人的な見解として、自由に発信していい」と伝えました。
彼は最初、戸惑いながらも、日々の業務で感じたことや、マニアックな技術の解説、競合製品に対する個人的な分析などを、少し武骨な文章で投稿し始めました。すると、驚くべきことが起こりました。
これまで全く反応のなかったアカウントに、同業の技術者や研究者から「その視点はなかった」「いつも勉強になります」といったリプライが届き始めたのです。やがて、彼の投稿は業界内で「あの会社の〇〇さんの投稿は面白い」と評判になり、フォロワーは数ヶ月で数千人にまで増加。ついには、彼の投稿がきっかけで、新規の大型案件に関する問い合わせがDMに届く、という事態にまで発展しました。
これは、企業という大きな主語ではなく、専門知識と情熱を持った「個人」が発信する情報だからこそ、人の心を動かした典型的な例です。もちろん、炎上リスクの管理など、注意すべき点は多々あります。しかし、それを恐れて無個性な運用に終始していては、SNSというコミュニケーションの場で存在感を示すことは、ますます難しくなっていくでしょう。
SNSマーケティングにおいて、オーガニックな投稿と並行して重要になるのが「広告運用」です。そして、この広告運用の世界は、AI(人工知能)の進化によって、今、劇的な変化の渦中にあります。かつては、広告担当者が経験と勘を頼りに、細かいターゲティング設定や入札調整を夜な夜な行っていたものですが、その多くはAIによる「自動化」に取って代わられつつあります。
この変化の核となっているのが、プラットフォームが提供する「機械学習アルゴリズム」です。
こうした自動化の流れは、広告担当者の役割を根本から変えるものです。もはや、細かい設定作業に時間を費やすことは求められません。これからの担当者に必要なのは、大きく分けて二つのスキルです。
私自身、広告の自動最適化機能を使い始めた当初は、半信半疑でした。「本当にAIに任せて大丈夫なのか?」と、つい手動で介入してしまい、かえって成果を悪化させてしまった苦い経験があります。しかし、ある時、思い切ってAIを信頼し、自分は新しいクリエイティブのアイデアをとにかくたくさん用意し、テストすることに集中してみました。
その結果、AIは膨大なテスト結果から瞬時に勝ちパターンを学習し、CPA(顧客獲得単価)を、手動で運用していた頃の半分以下にまで改善してくれたのです。この時、AIと人間の新しい協業の形を実感しました。面倒な最適化作業はAIに任せ、人間は人間にしかできない、創造的な仕事に集中する。この役割分担こそが、広告効果を最大化する鍵なのです。
ただし、注意点もあります。AIの学習データが偏ってしまうと、成果が出にくくなることがあります。常に新しい切り口のクリエイティブを提供し続けることで、AIの学習を活性化させてあげることが、自動化時代に成功するための、運用者の腕の見せ所と言えるでしょう。
広告運用におけるAIの役割はすでに述べましたが、AIの活用範囲はそれだけにとどまりません。日々のSNSアカウント運用における、様々な業務を効率化し、その質を高めるための強力なパートナーとして、AIは急速に普及しています。
一昔前までは、専門的な知識がなければ扱えなかったAIツールですが、現在では誰でも直感的に使えるサービスが数多く登場しています。これらを活用しない手はありません。
ここでは、具体的な運用シーン別に、AIの最新活用事例を紹介します。
AIは、SNS担当者の仕事を奪う存在ではありません。むしろ、これまで時間や人手の問題でやりたくてもできなかった、より本質的で創造的な仕事に集中させてくれる、最高の「アシスタント」なのです。これらのツールを賢く使いこなすことが、これからのSNS運用の生産性を大きく左右するでしょう。
SNSマーケティングを成功させるためには、各SNSを個別の「点」として捉えるのではなく、連携させて一つの「線」、さらには「面」として機能させる「クロスチャネル戦略」の視点が不可欠です。
Instagram、X、TikTok、Facebook、LINE。それぞれのプラットフォームには、異なるユーザー層がおり、異なる文化、異なる使われ方が存在します。これらの特性を理解せず、同じコンテンツを全てのSNSに同じように投稿するだけでは、それぞれのプラットフォームが持つポテンシャルを最大限に引き出すことはできません。
効果的なクロスチャネル戦略とは、各SNSの役割を明確に定義し、ユーザーを自社のマーケティングファネルの中でスムーズに誘導していくための導線を設計することです。
例えば、以下のような設計が考えられます。
役割 とにかく多くの潜在顧客に、ブランドの存在を知ってもらう。
プラットフォーム TikTokやInstagramのリール。視覚的なインパクトが強く、拡散力の高いショート動画で、まだブランドを知らない層に広くアプローチします。
役割 ブランドへの理解を深め、信頼関係を築く。
プラットフォーム:XやInstagramのフィード投稿。ショート動画で興味を持ったユーザーに対して、より詳細な情報や、利用者の口コミ(UGC)、開発の裏話などを提供し、ファン化を促進します。Xの速報性を活かして、リアルタイムのQ&Aセッションを行うのも有効です。
役割購買を後押しし、リピーターになってもらう。
プラットフォーム LINE公式アカウント。他のSNSから誘導し、「お友だち」になってもらいます。LINEはクローズドな環境であるため、限定クーポンや先行情報といった、特別なメッセージを届けるのに最適です。ブロックされない限り、企業側から直接アプローチできる、最も強力な関係構築ツールとなります。
私が以前担当したアパレルブランドのキャンペーンでは、このクロスチャネル戦略が大きな成果を上げました。まずInstagramのリールで、人気インフルエンサーを起用したコーディネート動画を投稿して広く認知を獲得。次に、その投稿のコメント欄やストーリーズで、「このコーデの詳細と、限定割引クーポンはLINEで配信中!」と告知し、LINE公式アカウントへの登録を促しました。
結果として、単に商品を売るだけでなく、将来にわたって直接コミュニケーションが取れる、熱量の高い顧客リストを大量に獲得することに成功したのです。
各SNSの得意なこと、不得意なことを見極め、それらをどう組み合わせれば、ユーザーにとって最も心地よく、価値のある情報体験を提供できるか。その全体設計図を描く能力が、これからのSNSマーケターには強く求められます。
ここまで様々なSNSのトレンドについて解説してきましたが、最も重要なのは、これらの知識を「知っている」だけで終わらせず、いかに日々の業務に落とし込み、「実行」するかです。トレンドの流れはあまりに速く、完璧な分析や企画書を待っていては、あっという間に乗り遅れてしまいます。
では、どうすれば最新トレンドを素早くキャッチし、即座にアクションに移せる、俊敏な組織になることができるのでしょうか。最後に、私が実践している具体的な方法と、大切にしている心構えをお伝えします。
トレンドをキャッチアップするための具体的な情報収集術:
トレンドを即実行に移すための組織文化とプロセス
私が駆け出しの頃、ある上司から言われた「SNSは壮大な実験場だ」という言葉を、今でも大切にしています。完璧な正解など、どこにも存在しません。あるのは、無数の仮説と、その検証結果だけです。恐れずに試し、失敗から学び、昨日よりも少しでも面白いコミュニケーションをユーザーに届ける。その愚直な繰り返しの先にこそ、本当にユーザーと繋がるSNSマーケティングの未来があると、私は信じています。
トレンドの波を乗りこなし、ユーザーと繋がるSNS戦略へ
SNSマーケティングの最新トレンドを、10の視点から深く掘り下げてきました。ショート動画の爆発的な普及から、AIとの協業、そして各チャネルを連携させる戦略的な視点まで、その変化の激しさと幅広さを感じていただけたのではないでしょうか。
一つひとつのトレンドは、独立しているようでいて、実は深く結びついています。その根底に流れているのは、「企業からの一方的な情報発信は、もはやユーザーに届かない」という、紛れもない事実です。
ユーザーが求めているのは、広告宣伝ではなく「共感できるコンテンツ」。作り込まれた完璧な姿ではなく「人間味のあるリアルなコミュニケーション」。そして、画一的なメッセージではなく「自分ごととして感じられるパーソナルな体験」です。
今回紹介したテクニックや考え方は、変化の激しいSNSの世界を航海するための、いわば「海図」や「コンパス」のようなものです。しかし、最も大切なのは、これらのツールを手に、実際に大海原へと漕ぎ出す勇気を持つことです。
高価な機材や、大規模なチームは必要ありません。まずは、あなたの目の前にいる顧客が、今、何に悩み、何に心を動かされているのかに、真摯に耳を傾けることから全ては始まります。そして、彼らに喜んでもらうために、今日からできる小さな一歩を踏み出してみてください。
「この投稿、面白そうだから試してみよう」
その小さな実験の積み重ねが、やがて他の誰も真似できない、あなたのブランドだけの強力な武器となります。トレンドという荒波を恐れるのではなく、それを乗りこなすサーファーのように、しなやかに、そして大胆に。SNSという広大な海で、多くのユーザーとの素晴らしい出会いが生まれることを、心から願っています。
執筆者
小濵 季史
株式会社カプセル 代表
デザイン歴30年以上。全国誌のデザインからキャリアをスタートし、これまでに1,000件以上の企業・サービスのブランディングを手掛けてきました。長年の経験に裏打ちされたデザイン力を強みに、感性と数字をバランスよく取り入れたマーケティング設計を得意としています。
また、自らも20年以上にわたり経営を続けてきた経験から、経営者の視点に立った実践的なマーケティング支援を行っています。成果に直結する戦略構築に定評があり、多くの企業から信頼を寄せられています。
香川県出身で、無類のうどん好き。地域への愛着と人間味あふれる視点を大切にしながら、企業の成長を支えるパートナーであり続けます。
