2025.12.12 最終更新日:2025.11.10

SNS運用のプロが実践する、最新アルゴリズム攻略法【2025年版】

「先月まで伸びていた投稿が、今月に入って急に反応が鈍くなった」「毎日投稿を頑張っているのに、フォロワーが一向に増えない」――。SNS運用を担当する多くの方が、まるで手のひらの上で踊らされているかのように、絶え間なく続くアルゴリズムの変更に疲弊しているのではないでしょうか。

 

私自身、SEO(検索エンジン最適化)を主戦場としながらも、クライアントのSNS運用に深く関わる者として、その「振り回される感覚」は痛いほど理解できます。特にここ数年、AIの進化に伴い、各プラットフォームの変化は加速する一方です。

 

しかし、2025年の今、私たちが向き合うべき事実は非常にシンプルです。それは、小手先のテクニックは驚くほどの速さで陳腐化するということ。そして、プラットフォームが変わっても変わらない「本質」を理解することこそが、最強の攻略法であるということです。これから、各SNSの最新動向から、アルゴリズムの「顔色」に左右されない普遍的な思考法まで、私が現場で培ってきた知見を交えて徹底的に解説していきます。

 

1. 主要SNSのアルゴリズム変更の歴史と今後の予測

SNSのアルゴリズムは、無秩序に変わっているわけではありません。そこには明確な「目的」の変遷が存在します。この歴史の流れを理解することは、未来を予測する上で欠かせない指針となります。

 

私がこの業界に入った2010年代中頃、SNS運用は「いかに多くのフォロワーを集めるか」というゲームでした。フィードは単純な「時系列順」が主流。つまり、投稿すればするほどフォロワーの目に触れるチャンスがありました。この時代は、相互フォローキャンペーンや、とにかく投稿量を増やす「力技」が通用したのです。

 

しかし、ユーザーと投稿が増えすぎた結果、フィードは情報で溢れかえり、「見たい投稿が見られない」という不満が噴出しました。そこで各プラットフォームは、「エンゲージメント(いいね・コメントなど)」を重視するアルゴリズムへと移行しました。ユーザーからの反応が良い投稿を優先的に表示することで、フィードの質を担保しようとしたのです。

 

そして現在、2025年。私たちは「AIレコメンド」の時代に生きています。これは、ユーザーが過去に示した「興味・関心」に基づき、AIが「あなたが好きそうなコンテンツ」をフォロワー内外問わず推薦する仕組みです。TikTokがこの流れを決定づけ、今やInstagram(発見タブやリール)、YouTube(ホームフィード)も完全にこのロジックが中心です。

 

この歴史的変遷を、プラットフォームの目的と共に整理してみましょう。

 

フェーズ 主流ロジック プラットフォームの目的 当時の「攻略法」
黎明期 (〜2015年頃) 時系列順 (新着順) ユーザー数の最大化、投稿の習慣化 投稿量の確保、相互フォロー
成長期 (〜2020年頃) エンゲージメント重視 ユーザーの滞在時間増加、関係性の強化 「いいね」「コメント」を稼ぐ投稿
成熟期 (2021年〜) AIレコメンド (興味・関心ベース) 個人の満足度最大化、潜在ニーズの掘り起こし 専門性、オリジナリティ、視聴完了率

 

では、2025年以降はどうなるでしょうか? 私は、この「AIレコメンド」がさらに先鋭化し、以下の2点が予測されると考えています。

 

  1. 「質」の再定義(AIによるオリジナリティの判定)
    AIが進化しすぎた結果、AIによる生成コンテンツや、他者のコンテンツの模倣が溢れかえっています。今後は、アルゴリズムが「そのアカウントならではの一次情報(経験談)か?」「他にはない独自の分析か?」という「オリジナリティ」や「専門性」をより高度に判定し、優遇する流れが加速するでしょう。SEOの世界でE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)が重視されるのと同じ流れです。
  2. プラットフォームの「壁」の融解
    ユーザーは複数のSNSを使い分けています。今後は、AIがプラットフォームを横断してユーザーの興味を分析し、「Xで話題にしていることを、Instagramのリールで提案する」といった、よりシームレスなレコメンドが強化される可能性があります。発信者としては、各SNSでの「専門性(キャラ)」の一貫性がより重要になります。

 

関連記事:SNSマーケティングの成功事例から学ぶポイント

 

2. Instagramの発見タブに載るための重要要素

Instagramにおいて、フォロワー外のユーザーにリーチし、新規フォロワーを獲得するための最大の「関所」。それが「発見タブ(虫眼鏡マーク)」です。

 

発見タブのアルゴリズムは、まさに前述した「AIレコメンド」の最たる例。AIが「あなた(ユーザー)がまだフォローしていないけれど、絶対に興味があるはず」と判断した投稿を、パーソナライズして表示する場所です。

 

では、AIは何を基準に「あなたの投稿」を「まだ見ぬ誰か」に推薦するのでしょうか? Instagramは公式にいくつかの「シグナル(手がかり)」を公表していますが、私が現場で特に重要だと感じているのは以下の要素です。

 

  • ユーザーの興味(Interest): ユーザーが過去に「いいね」「保存」「コメント」した投稿のジャンル。
  • 投稿の新しさ(Recency): より新しい情報が好まれます。
  • 投稿へのエンゲージメント(Engagement): 投稿されてから「どれだけ早く」「どれだけ多く」のエンゲージメント(特に保存・シェア)を集めたか。
  • 投稿者との関係性(Relationship): ユーザーが過去にその投稿者(あなた)の投稿に反応したことがあるか(発見タブでは影響度は低いが、ゼロではない)。

中でも、運用プロとして私が死活問題レベルで重視しているのが「エンゲージメント」の「」と「速度」です。

 

以前、あるインテリア系クライアントのアカウントで、美しい写真(静止画)の投稿を続けていましたが、リーチが伸び悩んでいました。そこで、単なる美しい写真ではなく、「この収納術、知らないと損する7選」といった「情報価値」を付加したカルーセル投稿(複数枚投稿)に切り替え、「後で見返せるように保存してね」という行動喚起(CTA)を徹底しました。

 

結果は劇的でした。投稿後24時間以内の「保存数」が従来の10倍以上に跳ね上がった投稿が生まれ、その投稿は数日後に発見タブ経由でのリーチが爆発的に増加。1投稿で数千人のフォロワー獲得に繋がったのです。これは、アルゴリズムが「この投稿は多くの人に『保存』されている=価値が高い情報だ」と判断し、同じジャンル(インテリアや収納)に興味があるユーザーの発見タブに一斉に推薦した結果です。

 

発見タブ掲載のために、今すぐ見直すべき重要要素を整理します。

 

重要要素 アルゴリズムへのシグナル 具体的な対策例
保存 (Save) 「後で見返したい」という再訪価値。最も強力なシグナル。 ・ノウハウリスト、チェックシート、レシピなど情報価値の高いカルーセル投稿。
・最後に「保存」を明確に促す。
シェア (Share) 「他者に推薦したい」という共感・有益性 ・強い共感を呼ぶ内容(失敗談、感動話)。
・「〇〇な友達にシェアしてあげて」と促す。
滞在時間 (Time Spent) 「ユーザーを惹きつけた」というコンテンツの魅力度 ・リール動画の冒頭1秒で心を掴み、視聴完了率を上げる。
・カルーセルのスワイプを促すデザイン(例:「→続き」)。
・キャプションを読ませる工夫。
プロフィール遷移 「投稿者自身への興味」というアカウントの魅力度 ・「他の投稿も見てね」とプロフィールへの導線を作る。
・アカウントの専門性を明確にする。

 

「いいね」の数だけを見て一喜一憂する時代は終わりました。いかに「保存」されるか。これが発見タブ攻略の鍵です。

 

 

3. X(旧Twitter)で拡散されやすい投稿の共通点

X(旧Twitter)は、他のSNSとは全く異なる生態系を持つプラットフォームです。Instagramが「ビジュアル(世界観)」、TikTokが「エンタメ(時間消費)」なら、Xは「情報(リアルタイム性)」と「議論(コミュニケーション)」の場です。

 

Xのアルゴリズム(タイムライン)は、主に「おすすめ」と「フォロー中」の2つで構成されていますが、拡散、すなわち「バズ」を生み出すのは圧倒的に「おすすめ」タブです。この「おすすめ」に載るためのロジックは、非常に「会話」を重視しています。評価される主なアクションは以下の通りです。

 

  • リポスト(旧リツイート): 最も強力な拡散シグナル。
  • 返信(リプライ): リポストに次いで重要。「会話」が発生している証拠。
  • いいね: 上記2つよりは弱いが、投稿の初期評価に使われる。
  • 滞在時間: 投稿(特に動画や画像)がどれだけ長く見られたか。
  • プロフィールクリック: 投稿者への興味。

私がXのコンサルティングで常にアドバイスするのは、「一方的に呟くな、会話の『種』を蒔け」ということです。Xのアルゴリズムは、独り言よりも「議論」や「反応」が活発な投稿を、「今、注目すべき話題だ」と判断し、フォロワー外の「おすすめ」タイムラインへと拡散させます。

 

では、具体的にどのような投稿が「会話の種」となり、拡散されやすいのでしょうか? 現場で見てきた共通点は明確です。

 

拡散タイプ 投稿の共通点 狙うアクション 具体例
① 共感・感情型 読者の「それ分かる!」という強い感情(喜怒哀楽)を揺さぶる。 リポスト、いいね 仕事の失敗談、日常の理不尽な話、感動した出来事、強い主張(例:「〇〇な人、最高」)
② 有益・ノウハウ型 専門的な知識や、すぐに使える裏技・ライフハックを提供する。 リポスト(備忘録として)、いいね 「知られざる〇〇の機能」「プロが教える〇〇術」「【保存版】〇〇リスト」
③ 議論・問いかけ型 賛否が分かれるテーマや、簡単な質問を投げかけ、読者の意見を引き出す。 返信(リプライ)、リポスト(意見表明) 「AとB、どっち派?」「〇〇についてどう思う?リプで教えて」
④ 速報・トレンド型 今まさに話題になっているニュースやトレンドに、独自の視点を加えて発信する。 リポスト(情報共有) (トレンドワード)+「個人的にはこう思う」「実は〇〇らしい」

 

特に私がクライアントによく勧めるテクニックが、「結論や補足情報を、あえて自分の投稿への『返信(リプライ)』にぶら下げる」手法です。これにより、投稿の表示時間(滞在時間)が伸びるだけでなく、ユーザーが返信欄を開くというアクションが加わり、アルゴリズムに「活発なスレッドだ」と認識させることができます。Xは「140文字(現在はそれ以上ですが)の芸術」と呼ばれるように、いかにプラットフォームの特性を理解し、その上で「会話」を設計するかが拡散の鍵となります。

 

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4. TikTokのおすすめフィードに表示される仕組み

TikTokは、SNSの世界に「AIレコメンド」という革命を持ち込んだ張本人です。そのアルゴリズムは、フォロワー数や過去の実績に関わらず、「1本の動画のパフォーマンス」のみで評価する、非常に公平かつシビアな仕組みを持っています。

 

あなたがTikTokに動画を投稿すると、まず少数のユーザーグループ(数百人程度)にテスト表示されます。そのグループでの反応(エンゲージメント)が良ければ、さらに大きなグループ(数千人)へ、さらに反応が良ければ(数万人)へ…と、ピラミッド式に拡散が拡大していきます。これが「バズ」の正体です。

 

では、その「反応の良さ」は何で測られるのでしょうか? TikTokが(公式・非公式に)重視している指標は以下の通りです。

 

  1. 視聴完了率 (Watch Completion Rate):
    最も重要です。動画を最後まで見てくれた人の割合。これが低いと「つまらない動画」と判断され、即座に拡散が止まります。
  2. 再視聴率 (Re-watch Rate):
    「面白くてもう一度見た」人の割合。視聴完了率100%を超える動画は、この指標が高いです。
  3. エンゲージメント(いいね、コメント、シェア):
    特に「コメント」と「シェア」は、ユーザーが能動的に関与した証拠として高く評価されます。
  4. フォロー率:
    動画を見た後に、プロフィールに飛んでフォローしてくれた割合。

私自身、趣味で運営しているニッチなDIYアカウントで、ある日投稿した「特定の工具の意外な使い方」という動画が、投稿後3日経ってから急激に伸び始め、最終的に数十万再生に達した経験があります。その動画は、フォロワーがわずか100人程度の時に投稿したものでした。分析すると、その動画は「視聴完了率が90%を超え、コメント欄で『そんな使い方あったのか!』という専門的な議論が活発に行われていた」のです。

 

TikTokのアルゴリズムは、フォロワー数という「過去の栄光」を一切見ません。今、この瞬間の「ユーザーの熱狂(=高い視聴完了率と活発なコメント)」だけを信じて、その動画を「同じ趣味を持つであろう他のユーザー」へ届けるのです。

 

TikTok攻略の鍵は、非常にシンプルです。

 

  • 冒頭1秒ですべてを決めろ: スワイプさせない「フック(掴み)」がなければ、視聴完了率は絶対に上がりません。
  • 「いいね」より「完了」: ユーザーに「いいね」を押させることより、「最後まで見させる」ことに全力を注ぐ構成にしてください。
  • コメント欄を「第二のコンテンツ」にしろ: 動画内で完結させず、あえて「続きはコメント欄で」と誘導したり、議論を呼ぶ「問い」を残したりすることで、滞在時間とエンゲージメントを稼ぎます。

 

関連記事はこちら:SNSマーケティングのトレンドを読む力

 

5. YouTubeの検索と関連動画で優位に立つ方法

YouTubeは、SNSでありながら「世界第2位の検索エンジン」という側面を持つ、非常にユニークなプラットフォームです。そのため、アルゴリズム攻略も「検索流入」と「レコメンド(おすすめ・関連動画)流入」の二軸で考える必要があります。

 

① 検索エンジン(VSEO)としての攻略

ユーザーが明確な「悩み」や「知りたいこと」(例:「確定申告 やり方」)を検索する経路です。ここは、私の本職であるSEOの考え方がそのまま通用します。

 

  • キーワード選定: ユーザーがどんな言葉で検索するかを徹底的にリサーチします。
  • タイトル・概要欄・タグ: 選定したキーワードを、ユーザーに分かりやすく、かつアルゴリズムに伝わるように盛り込みます。
  • サムネイル: 検索結果一覧で「一目で答えがありそう」と期待させ、クリックさせるデザイン(CTR:クリック率)が重要です。
  •  

② レコメンドエンジンとしての攻略

ユーザーが動画を見終わった後や、ホーム画面で「次に見る動画」として推薦される経路です。ここで最も重視されるのが、「総再生時間」「視聴者維持率」です。

 

総再生時間とは、「(再生回数)×(平均視聴時間)」のこと。YouTubeは広告で収益を上げているため、「ユーザーをYouTubeプラットフォーム内に、いかに長く滞在させたか」を最も重要な指標の一つとしています。10分の動画を50%(5分)見られる方が、3分の動画を100%(3分)見られるよりも、総再生時間は長くなります。

 

視聴者維持率とは、動画のどこでユーザーが離脱したかを示すグラフです。この維持率が高い(=最後まで飽きさせない)動画を、アルゴリズムは「良質なコンテンツ」と判断し、他のユーザーにも推薦(関連動画に表示)しやすくなります。

 

以前、ある料理系のクライアントで、「時短レシピ」として1分の短い動画を量産していましたが、再生数が伸び悩んでいました。そこで私は、あえて「プロが教える本格カルボナーラ」というテーマで、15分の長尺動画を提案しました。ただし、単に長いだけでは離脱されます。冒頭で「9割の人が間違っている、生クリームを使わない本物の作り方」とフックを入れ、調理の「なぜそうするのか」という専門的な解説(E-E-A-T)を丁寧に加え、最後まで飽きさせない構成にしたのです。

 

結果、視聴者維持率は40%を超え(15分動画としては驚異的です)、総再生時間が爆発的に増加。その動画は「カルボナーラ」と検索した人の関連動画に次々と表示されるようになり、チャンネル全体の成長を牽引するキラーコンテンツとなりました。YouTube攻略の二軸をまとめます。

 

流入経路 ユーザーの行動 最重要指標 攻略の鍵
検索流入 悩みを検索する CTR (クリック率) キーワード選定、魅力的なサムネイル・タイトル
レコメンド流入 (関連動画・ホーム) 受動的に動画を視聴する 総再生時間、視聴者維持率 長尺でも飽きさせない構成、専門性、冒頭のフック

 

 

6. アルゴリズムに左右されないファンとの関係構築

ここまで各SNSのアルゴリズム攻略法を解説してきましたが、ここで最も重要な話をします。それは、「アルゴリズム攻略」だけを目指す運用は、必ず破綻するという事実です。なぜなら、アルゴリズムは「プラットフォームの都合」で、明日にも変更される可能性があるからです。Instagramがリールを優遇しなくなったら? Xの拡散ロジックが変わったら? そのたびに、私たちは戦略をゼロから練り直さなければなりません。

 

私がSEOとSNS運用の両方を見てきた中で確信しているのは、最強のアルゴリズム攻略とは、「アルゴリズムを必要としないファン」を作ることです。

 

アルゴリズムが評価するのは、ユーザーの「行動(いいね、保存、視聴時間)」です。しかし、私たちが本当に目指すべきは、ユーザーの「心(信頼、共感、愛着)」を掴むことです。心が動けば、行動は後からついてきます。

 

では、「ファン」とは具体的に何でしょうか? それは、「あなたの投稿だから見る」「あなたを指名して検索する」人々のことです。彼らは、アルゴリズムがあなたの投稿をフィードに表示しようがしまいが、能動的にあなたのアカウントを訪れ、反応してくれます。

 

この「ファン(=コミュニティ)」を構築するために、私たちがリソースを割くべきは、新規投稿作成「以外」の時間です。

 

  1. 双方向のコミュニケーションの徹底
    投稿に寄せられたコメントに、ただ「いいね」を押すだけになっていませんか? それは対話ではありません。心のこもった言葉で「返信」すること。できれば、相手の名前を呼び、質問で返すなど「会話のキャッチボール」を続けることが、熱狂的なファンを育てます。
  2. ストーリーズ・ライブの活用
    作り込まれたフィード投稿が「表の顔」なら、ストーリーズやインスタライブは「素の顔」を見せる場所です。運用者の悩み、制作の裏側、日常のちょっとした気づきなどを共有することで、ユーザーは「完璧なアカウント」ではなく「人間味のあるパートナー」として親近感を抱きます。
  3. SNSを「入口」と割り切る
    SNSは、あくまで「出会いの場」です。アルゴリズムという他人の土俵で戦い続けるのは危険です。熱量の高いファンとは、SNSの外側(メルマガ、LINE、自社オウンドメディア、オンラインサロンなど)で繋がる仕組みを必ず用意してください。そこは、アルゴリズムの変動という「嵐」から逃れられる、あなただけの「避難所」であり「資産」になります。

アルゴリズムを攻略して「バズ」を生むことは、花火のようなものです。一方、ファンとの関係を築くことは、小さな苗木を育てるようなものです。地味で時間がかかりますが、一度育てば、嵐にも負けない大樹となります。SNS運用プロは、花火を打ち上げながら、同時に苗木に水をやり続けるのです。

 

関連ニュース:集客につながるSNSマーケティングのコツ

 

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7. SNSプラットフォームごとの最適な動画尺とフォーマット

「動画の時代」と言われて久しいですが、「どのSNSで、どのくらいの長さの動画を出すべきか」は、多くの運用者が悩むポイントです。

 

「TikTokやリールは短い方がいい」「YouTubeは長い方がいい」という一般論がありますが、2025年現在、その常識は崩れつつあります。TikTokは10分、Instagramリールも90秒(一部ではそれ以上)の動画が投稿可能になり、各プラットフォームが「最適な尺」を模索しているのが現状です。

 

私が導き出した結論は、「最適な尺」はプラットフォームが決めるのではなく、「ユーザーがそのプラットフォームで求める体験」と「コンテンツの目的」によって決まる、ということです。例えば、同じ「料理」というテーマでも、最適な尺は異なります。

 

  • TikTok: 「なにこれ!?」という驚きやシズル感を「瞬間的」に楽しみたい。→ 15〜30秒(テンポ重視)
  • Instagramリール: 「あ、これなら私でも作れそう」という手軽な「疑似体験」をしたい。→ 30〜60秒(ハウツー重視)
  • YouTube(通常動画): 「なぜこの工程が必要なの?」という深い「学び」を得たい。→ 10分以上(専門性・網羅性重視)

これを踏まえ、2025年現在の各プラットフォームの傾向と推奨フォーマットを整理します。

 

プラットフォーム 推奨フォーマット 主流の尺 (傾向) コンテンツの目的
Instagram リール (縦型 9:16)
カルーセル (正方形 1:1)
リール: 30〜90秒
カルーセル: 5〜10枚
保存されるノウハウ、世界観の提示、ファン化
X (旧Twitter) テキスト
動画 (横型/正方形)
動画: 30秒〜2分 リアルタイムな情報共有、議論の喚起
TikTok ショート動画 (縦型 9:16) 15〜60秒 (※長尺化の兆候あり) 瞬発的なエンタメ、トレンドの創出、認知拡大
YouTube 通常動画 (横型 16:9)
ショート (縦型 9:16)
通常: 8分以上 (※広告収益化の目安)
ショート: 60秒以内
深い学び (専門性)、検索ニーズの解決、資産化

 

「YouTubeショートでバズった動画を、そのままリールやTikTokに転用する」という手法は効率的に見えますが、私は推奨しません。なぜなら、各プラットフォームでユーザーが求める「文脈」や「テンポ感」が微妙に異なるからです。真のプロは、素材は同じでも、プラットフォームごとに編集(テロップの入れ方、カット割り、音源)を最適化します。

 

次に読む:SNSマーケティング初心者が最初に知るべきこと

 

8. エンゲージメント以外の重要な評価指標とは

SNS運用をクライアントに報告する際、「今月はフォロワーが〇人増えました」「いいねが〇件つきました」という報告だけで終わっていないでしょうか? もしそうなら、それは「運用プロ」の仕事とは言えません。

 

「いいね」や「フォロワー数」は、いわば「虚栄の指標(Vanity Metrics)」と呼ばれる、見栄えは良いがビジネス成果とは直結しにくい数字です。アルゴリズムがエンゲージメントを重視するとは言いましたが、それはあくまで「プラットフォーム内での評価」に過ぎません。

 

私たちがビジネスとしてSNSを運用する以上、本当に追うべきは「ビジネスのゴール(例:売上、認知、リード獲得)にどれだけ貢献したか」を示す指標です。

 

私がクライアントの「いいねの数が少ない」という不安に対し、常にお見せしている「本当に重要な指標」を紹介します。

 

虚栄の指標 (Vanity Metrics) 本当に重要な指標 (Actionable Metrics) この指標が示す「価値」
いいね数 保存数 コンテンツの「再訪価値」「資産価値」
リーチ数 (インプレッション) シェア数 コンテンツの「他者推薦価値」「口コミ力」
フォロワー数 プロフィール遷移率 アカウント(発信者)への「興味・関心度」
(指標なし) Webサイトクリック数 (CTR) ビジネスゴールへの「貢献度」「送客力」
再生回数 視聴者維持率 / 滞在時間 コンテンツへの「没入度」「満足度」

 

あるBtoB企業のXアカウント事例です。フォロワーは数千人程度で、「いいね」も平均10〜20件と、お世辞にも「バズっている」とは言えない状態でした。しかし、運用担当者は落ち込んでいませんでした。なぜなら、彼らが追っていたのは「プロフィールに設置した『ホワイトペーパーダウンロード(自社サイト)』のクリック数」だったからです。

 

彼らの投稿はニッチな業界ノウハウが中心で、一般受けはしません。しかし、その情報を本当に必要としている「濃い」ターゲットには刺さっており、「いいね」はせずとも、プロフィールに飛んで資料をダウンロード(=リード獲得)するという行動に繋がっていました。フォロワー数やいいね数だけを見れば「失敗」ですが、ビジネス指標で見れば「大成功」の運用事例です。

 

あなたのSNS運用の「ゴール」は何ですか? そのゴールに直結する「重要な指標」を正しく設定することが、アルゴリズムの変動に一喜一憂しないための第一歩です。

 

 

9. アルゴリズムの変動に素早く対応するための情報収集術

「アルゴリズムの変動に対応しろと言われても、その変動自体をどう知ればいいのか?」 当然の疑問です。

アルゴリズムの変更は、ある日突然、予告なく行われるように見えます。しかし、プロの運用者は、その「予兆」を掴むために、常にアンテナを張っています。変動が起きてから慌てて対応するのではなく、変動を予測し、先回りしてテスト(仮説検証)を行うのです。

 

私が日々実践している、情報の「仕入れ先」と「分析法」を共有します。

 

  1. 【最重要】一次情報(公式)を追う
    当たり前ですが、最も確実な情報源です。各プラットフォームのトップ(例:InstagramのCEOであるアダム・モッセーリ氏)のSNSアカウントや、公式のクリエイター向けブログ、開発者ブログは最低限、毎日チェックします。彼らが「最近〇〇という機能をテストしている」「今後は〇〇を重視する」とポロッと発言したことが、数ヶ月後の大規模アップデートに繋がります。
  2. 海外の専門家・アナリストを追う
    SNSのトレンドやアルゴリズムの分析は、残念ながら(あるいは当然ながら)英語圏が最も早いです。XやYouTubeで、特定のSNS(例:Instagram)の動向だけをウォッチしている専門家やアナリストを数人フォローしておくと、国内メディアが報じる数週間前に「予兆」を掴めることがあります。
  3. 自分のインサイトを「疑う」
    情報収集で最も重要なのは、外部の情報ではなく「自分のアカウントのインサイト(分析データ)」です。毎日インサイトを見ていると、「あれ? 先週までと比べて、リールのリーチが落ちて、カルーセルの保存数が上がっているな…」といった「微細な変化」に気づきます。これが、アルゴリズムが評価の比重を変えた「予兆」です。多くの人はこの変化を「誤差」として見逃しますが、プロはここで「なぜ? もしかして〇〇が評価され始めた?」と仮説を立て、テスト投稿を開始します。
  4. 競合・異業種のベンチマーク
    自分が運用するジャンルだけでなく、全く異なるジャンルで「今、伸びているアカウント」が、何を仕掛けているかを定期的に観察します。「最近、どの美容系アカウントもリールの冒頭に『問いかけ』を入れるようになったな」といった共通点を見つけることで、トレンドの変化を察知できます。

アルゴリズムの変動は「災害」ではありません。事前に「天気予報」を知る努力をすれば、十分に対策が打てる「天候の変化」なのです。

 

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10. 変化を恐れないSNS運用のための思考法

ここまで2025年最新のアルゴリズム攻略法について、様々なプラットフォームのテクニックと指標を解説してきました。

 

本質をまとめましょう。Instagramの発見タブ攻略も、Xの拡散ロジックも、TikTokのおすすめフィードも、その根底にある目的はただ一つ、「ユーザーの満足度(=滞在時間)を最大化すること」です。アルゴリズムとは、その「満足度」を測るためにプラットフォームが用意した、無数の「モノサシ(評価指標)」の集合体に過ぎません。

 

私たちがSNS運用で疲弊してしまうのは、この「モノサシ」の目盛りが変わるたびに、右往左往してしまうからです。「いいね」が評価されなくなれば不安になり、「保存」が重要と聞けば慌ててリスト投稿を作る。これは「アルゴリズム」の顔色を伺う運用であり、持続可能ではありません。

 

変化を恐れないプロの運用者が常に見ているのは、アルゴリズムという「モノサシ」ではありません。そのモノサシの向こう側にいる、「ユーザー(人間)」の顔です。

 

アルゴリズムがどれだけ変わろうと、人間がコンテンツに求める本質は変わりません。

 

  • 役に立った(有益性)
  • 心を動かされた(共感・感動)
  • 面白かった(エンタメ性)
  • 誰かと繋がりたくなった(コミュニケーション)

あなたの投稿は、これらの価値を提供できているでしょうか? もしできていれば、アルゴリズムがどんなに変わっても、必ず誰かの「心」に届き、それが「保存」や「シェア」「コメント」といった「行動」となって現れます。アルゴリズムは、その「結果」を後追いで評価するに過ぎません。

 


アルゴリズムより“人の心”を掴め

本コラムを通してお伝えしたかったのは、「アルゴリズムを追うな、人を見よ」という一点に尽きます。SNSの仕組みは日々変化し、昨日の正解が今日には通用しない世界です。しかし、その根底にある目的――“ユーザーが満足し、プラットフォームに留まること”――は一貫しています。

 

つまり、AIがどれほど高度化しようと、評価されるのは「人の心を動かす投稿」であるという事実です。保存やシェア、コメントといった行動はすべて、「心が動いた結果」にすぎません。各SNSの特性を理解し、適切なフォーマットや構成を選ぶことは重要ですが、最終的にリーチを生み出すのはテクニックではなく“共感”と“信頼”です。変化を恐れず、指標の裏にいる「人間」を見据え、対話を重ねながら価値を届ける。これこそが2025年のSNS運用における真の攻略法であり、持続的な成果を生む唯一の道です。

 

参考ページ:SNS運用のエンゲージメント率とは?計算方法と高めるための施策

 

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執筆者

株式会社カプセル 代表

デザイン歴30年以上。全国誌のデザインからキャリアをスタートし、これまでに1,000件以上の企業・サービスのブランディングを手掛けてきました。長年の経験に裏打ちされたデザイン力を強みに、感性と数字をバランスよく取り入れたマーケティング設計を得意としています。
また、自らも20年以上にわたり経営を続けてきた経験から、経営者の視点に立った実践的なマーケティング支援を行っています。成果に直結する戦略構築に定評があり、多くの企業から信頼を寄せられています。
香川県出身で、無類のうどん好き。地域への愛着と人間味あふれる視点を大切にしながら、企業の成長を支えるパートナーであり続けます。

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